原判決は第一審判決の法令の適用に誤りがあるものとしてこれを破棄し、刑訴四〇〇条但書により第一審判決の確定した事実に法律を適用し、被告人を懲役一〇月及び罰金五千円に処したものであつて、かかる場合原判決は第一審判決の判示事実並びに証拠を引用したものと解すべきことは、当裁判所屡次の判例とするところである。
第一審判決の法令適用の誤りを理由として破棄自判する第二審判決と、第一審判決の判示事実および証拠の引用
刑訴法400条但書,刑訴法335条
判旨
控訴審が第一審判決の法令適用誤りを理由に破棄自判する場合、原判決は第一審判決が確定した事実及び証拠を引用したものと解される。したがって、事実を改めて記載しなくても理由不備の違法はない。
問題の所在(論点)
控訴裁判所が刑訴法400条但書により第一審判決の法令適用誤りを是正して自判する場合において、判決書に改めて事実を記載せず第一審の事実・証拠を引用する形式は、裁判の適法な構成として許容されるか。
規範
刑事訴訟法400条但書に基づき、控訴裁判所が第一審判決の法令の適用に誤りがあるとして破棄自判する場合、控訴裁判所は第一審判決が確定した事実および証拠を引用したものと解すべきである。これにより、控訴裁判所の判決書において改めて事実を掲げる必要はない。
重要事実
被告人は第一審において懲役刑および罰金刑の言い渡しを受けた。これに対し、控訴審(原審)は第一審判決の法令の適用に誤りがあるとして、刑訴法400条但書によりこれを破棄し、第一審が確定した事実を前提に自ら判決を下した(懲役10月および罰金5000円)。弁護人は、この原判決が事実の摘示を欠いている点等を不服として、憲法違反や判例違反を理由に上告した。
あてはめ
最高裁判所は、昭和25年9月19日の既判例を踏襲し、控訴審が第一審の事実認定を前提に法律を適用する場合には、第一審判決の事実及び証拠を引用したものとみなす。本件原判決は、第一審の事実認定を維持したまま法令適用の誤りのみを正して判決を下しており、この引用形式は当裁判所の累次の判例に合致する適法なものであるといえる。したがって、弁護人の主張は実質的に刑訴法411条の職権破棄事由を主張するものに過ぎず、上告理由にはあたらない。
結論
控訴審が第一審の確定事実に基づき自判する場合、第一審の事実・証拠を引用することで足り、判決は適法である。上告棄却。
実務上の射程
控訴審の自判手続における判決書の簡略化(引用形式)の適法性を確認するものである。司法試験の刑事訴訟法において、控訴審判決の形式的有効性や、一審判決との関係性が問われた際に、判決構成の合理性を支える規範として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)3335 / 裁判年月日: 昭和33年4月15日 / 結論: 棄却
控訴審が第一審判決の事実認定について触れるところなく或はこれを是認しつつ他の理由によりこれを破棄する場合は改めて認定事実を判決に判示するを要しない