判旨
不利益変更禁止の原則は、原判決の主文を全体として観察し、第一審の刑より軽くなっているか否かによって判断される。また、自白の補強証拠は、自白と相まって犯罪事実を認定できる程度に備わっていれば足りる。
問題の所在(論点)
1. 控訴審の判決が第一審の刑より実質的に重いといえるか(不利益変更禁止の原則、刑訴法402条)。2. 証拠が被告人の自白を補強するに足りるものといえるか(補強証拠の要否、刑訴法319条2項)。
規範
1. 控訴審における不利益変更の有無は、判決主文を総体的に観察し、第一審の刑よりも実質的に重くなっていないかにより判断する。2. 自白の補強証拠(刑訴法319条2項)は、自白が架空のものでないことを保障し、これと相まって犯罪事実の真実性を担保するに足りるものであれば足りる。
重要事実
被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、第一審の判決に対して控訴したところ、原審(控訴審)は第一審よりも軽い刑を言い渡した。これに対し、被告人側は当該判決が違憲であることや、自白を補強する証拠が不十分であることを理由に上告を提起した。
あてはめ
1. 原審の判決を主文の総体的な観察に照らせば、第一審の刑よりも軽いものであると認められるため、不利益変更には当たらない。2. 原判決が挙げている証拠は、被告人の自白を補強するに足りるものと認められる。したがって、自白のみによる処罰を禁じた憲法38条3項や刑訴法319条2項に違反するとはいえない。
結論
本件上告は棄却される。原判決には不利益変更禁止の原則違反や補強法則違反の違法は認められない。
実務上の射程
不利益変更禁止の原則における「刑の重軽」を、形式的な刑名だけでなく主文全体から実質的に判断する実務上の基準を示している。また、補強証拠が形式的に具備されているか否かの判断手法についても、原審の証拠評価を是認する形での規範性を持つ。
事件番号: 昭和25(れ)229 / 裁判年月日: 昭和25年6月13日 / 結論: 棄却
舊刑訴法第四〇三條に「原判決ノ刑ヨリ重キ刑ヲ言渡スコトヲ得ス」というのは、主文の刑についてのことであつて、控訴審判決が第一審判決の認定した數罪の中その一部分を無罪とした場合でも、その言渡した刑が第一審判決の主文の刑より重くない限りこれを以て右の法條に違背するものということはできない。(昭和二三年(れ)第七四五號同年一二…