判旨
控訴趣意において、被告人に不利益な結果を求める主張をすることは許されない。もっとも、その主張が第一審判決の内容と比較して被告人のために不利益な主張を含まない場合には、適法な控訴趣意となる。
問題の所在(論点)
弁護人が第一審判決よりも被告人に不利益な結果を招くような内容の控訴趣意を主張することが許されるか(控訴趣意の適法性)。
規範
控訴制度の趣旨及び不利益変更禁止の原則に照らし、第一審判決の結果と比較して被告人に不利益な是正をすべきことを求める控訴趣意は許されない。すなわち、弁護人が主張する控訴趣意が、第一審判決よりも被告人に不利益な結果を導く性質のものである場合には、適法な控訴理由とはなり得ない。
重要事実
被告人が第一審判決を不服として控訴した際、弁護人が提出した控訴趣意について、上告審において「被告人のために不利益な主張をしたものであり判例に違反する」との主張がなされた。具体的には、弁護人が事実誤認ではなく量刑不当のみを主張したことや、その主張内容が第一審判決に比して不利益であるかどうかが争点となった。
あてはめ
本件における控訴趣意を精査すると、第一審判決の内容と比較して、被告人の立場を悪化させるような不利益な主張は含まれていない。また、弁護人の主張は量刑不当を訴えるものであって、確定した事実に反して被告人に不利な事実認定を求めるような性質のものではない。したがって、本件の控訴趣意は「被告人に不利益な是正を求めるもの」には該当しない。
結論
被告人の不利益に第一審判決を是正すべきとする控訴趣意は許されないが、本件では第一審判決に比して不利益な主張は含まれていないため、適法である。
実務上の射程
刑事訴訟法における不利益変更禁止の法理(刑訴法396条、402条参照)に関連し、弁護人の訴訟活動の限界を画する。実務上、被告人の意思に反して、あるいは客観的に被告人の地位を悪化させる主張は控訴趣意として不適法とされるリスクがあることを示唆している。
事件番号: 昭和27(あ)107 / 裁判年月日: 昭和28年5月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不利益変更禁止の原則は、原判決の主文を全体として観察し、第一審の刑より軽くなっているか否かによって判断される。また、自白の補強証拠は、自白と相まって犯罪事実を認定できる程度に備わっていれば足りる。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、第一審の判決に対して控訴したところ、原…