自ら控訴の申立をした第一審弁護人が控訴趣意書差出期間内に控訴趣意書を提出した場合には、控訴審において弁護届の提出がなくても、その趣意書が撤回される等の特段の事情のない限り、右控訴趣意は審判の対象とさるべきである。
自ら控訴申立をした第一審弁護人が差出した控訴趣意書の効力
刑訴法355条,刑訴法376条,刑訴法32条2項,刑訴規則236条,刑訴規則18条
判旨
第一審弁護人が控訴の申立てをし、控訴趣意書を差し出した場合、後に控訴審で選任されていないとしてこれを不適法とした原判決には、判決に影響を及ぼすべき法令の違反がある。
問題の所在(論点)
第一審弁護人が提出した控訴趣意書の適格性、および控訴審において選任手続を経ていないことを理由に、第一審弁護人による控訴趣意書を審判対象外とすることの是非が問題となる。
規範
第一審弁護人が自ら控訴の申立てを行い、期限内に控訴趣意書を提出した場合には、その後当該書面が適法に撤回されたり、公判期日において陳述しない旨の明確な意思表示がなされたりするなどの特段の事情がない限り、裁判所はこれを審判の対象としなければならない。
重要事実
第一審弁護人が自ら控訴を申し立て、控訴趣意書差出最終日の前日に「控訴趣意書」と題する書面を提出した。原審は、当該弁護人が控訴審において被告人から適法に選任されていないことを理由に、当該書面を適法な控訴趣意書と認めず、判断を示さないまま国選弁護人の提出した趣意のみを審理して控訴棄却の判決を下した。なお、当該書面には国選弁護人の書面にはない法令違反や量刑不当の主張が含まれていた。
あてはめ
本件では、第一審弁護人が期限内に趣意書を提出しており、これが適法に撤回された事実や陳述しない旨の意思表示といった特段の事情は認められない。したがって、被告人の弁護権確保の観点からも、当該書面は拒否されるべきではなく、審判の対象とされるべきであったといえる。原審がこれを不適法として判断を遺漏したことは、国選弁護人の趣意にない主張が含まれていた以上、判決に影響を及ぼすべき法令の違反に当たる。
結論
原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
第一審弁護人の控訴申立権(刑訴法355条)およびその後の趣意書提出の有効性を担保する趣旨。控訴審での選任の有無という形式論よりも、実質的な被告人の防御権を重視する。答案上は、弁護人の代理権限や控訴趣意の審理義務が論点となる際、手続きの継続性を肯定する根拠として用いる。
事件番号: 昭和26(あ)1603 / 裁判年月日: 昭和27年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において主張せず、その判断を経ていない法令違反や事実誤認の事由を、上告審において新たに上告理由として主張することはできない。 第1 事案の概要:被告人の原審弁護人は、第一審判決に対し刑の量定が不当であることを理由として控訴を申し立てた。しかし、上告審に至り、弁護人は新たに訴訟手続の法令違反お…