判旨
被告人が公判期日に出頭し、かつ弁護人が選任されている場合であっても、被告人自らが上告趣意書を提出することは法的に妨げられない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法上、弁護人が選任されている場合において、被告人本人が自ら上告趣意書を提出することが認められるか。被告人本人の上告趣意書提出権の成否が問題となる。
規範
刑事訴訟法における上告趣意書の提出権限については、弁護人のみに限定されるものではなく、被告人本人も自ら上告趣意書を作成し、提出することができる。これは、被告人の防御権を保障する観点から、弁護人による書面提出とは別に、本人による不服申立ての機会を確保する趣旨である。
重要事実
被告人が有罪判決を受け、弁護人を通じて上告を申し立てた。その後、弁護人が上告趣意書を提出したが、被告人自身も別途、自らの主張をまとめた上告趣意書を作成し、裁判所に提出しようとした事案である。
あてはめ
本件において、被告人は弁護人とともに上告の手続きを行っているが、被告人自身の権利として上告趣意を述べることを禁ずる規定はない。弁護人の上告趣意書が法的な要件を満たしているかに関わらず、被告人本人が作成した書面についても、その内容が刑訴法405条等の上告理由に該当するかを実質的に判断すべきである。
結論
被告人本人による上告趣意書の提出は認められる。ただし、本件の内容は刑訴法405条の上告理由に当たらず、411条を適用すべき事由もないため、上告は棄却される。
実務上の射程
被告人本人と弁護人の双方が上告趣意書を提出した場合、裁判所はその双方について内容を検討しなければならない。実務上、被告人独自の主張がなされるケースは多いが、それが法定の上告理由(憲法違反・判例違反等)に該当するかは厳格に判断される。
事件番号: 昭和26(あ)1567 / 裁判年月日: 昭和29年12月24日 / 結論: 破棄差戻
自ら控訴の申立をした第一審弁護人が控訴趣意書差出期間内に控訴趣意書を提出した場合には、控訴審において弁護届の提出がなくても、その趣意書が撤回される等の特段の事情のない限り、右控訴趣意は審判の対象とさるべきである。