舊刑訴法第四〇三條に「原判決ノ刑ヨリ重キ刑ヲ言渡スコトヲ得ス」というのは、主文の刑についてのことであつて、控訴審判決が第一審判決の認定した數罪の中その一部分を無罪とした場合でも、その言渡した刑が第一審判決の主文の刑より重くない限りこれを以て右の法條に違背するものということはできない。(昭和二三年(れ)第七四五號同年一二月一四日最高裁判所第三小法廷判決參照)。
第一審判決の認定した數罪のうちその一部を無罪としながら第一審判決と同一の刑を言渡した第二審判決と舊刑訴法第四〇三條
舊刑訴法403條
判旨
不利益変更禁止の原則は主文の刑について判断されるべきであり、控訴審が第一審の認定した数罪の一部を無罪とした場合であっても、宣告刑が第一審の刑より重くない限り、同原則に反しない。
問題の所在(論点)
控訴審において、第一審が認定した数罪の一部を無罪とした場合に、第一審と同一の刑を言い渡すことが不利益変更禁止の原則に抵触するか。
規範
不利益変更禁止の原則(旧刑訴法403条、現刑訴法402条)にいう「原判決の刑より重い刑」とは、主文で言い渡される刑の軽重を基準とする。したがって、罪数が減少した場合であっても、宣告される刑が全体として原判決の刑を上回らない限り、同原則には抵触しない。
重要事実
被告人は、約1年2ヶ月の間に十数回にわたりアルコールを故買したとして包括的に起訴された。第一審判決に対し、控訴審判決は、連続犯規定の削除を背景として、改正法施行前の行為を連続犯、施行後の行為を併合罪と二分して認定した。その際、控訴審は起訴事実の一部について無罪を言い渡したが、主文において第一審判決と同一の刑を言い渡した。これに対し、一部無罪となった以上、同一の刑を科すことは不利益変更にあたると主張して上告がなされた。
あてはめ
不利益変更禁止の原則は、被告人が不利益な変更を恐れて上訴を断念することを防ぐ趣旨である。この「刑の軽重」は、個々の罪に対する評価ではなく、最終的な主文の刑を比較して判断すべきものである。本件において、控訴審は第一審の認定した事実の一部を無罪としたものの、言い渡した刑自体は第一審と同一である。そうであれば、主文の刑が加重されたとは認められず、刑を重くしたものということはできない。
結論
控訴審判決の刑が第一審判決の刑より重くない限り、一部無罪を言い渡したとしても不利益変更禁止の原則には違反しない。
実務上の射程
現行刑訴法402条の解釈においても同様の枠組みが維持されている。答案上は、罪数の減少や一部無罪が生じたとしても、最終的な宣告刑が同一であれば「不利益」には当たらないとする論拠として活用できる。ただし、主文の刑が同一であっても、執行猶予の剥奪や保護観察の付加などは不利益変更に該当し得る点には注意が必要である。
事件番号: 昭和25(れ)479 / 裁判年月日: 昭和25年7月18日 / 結論: 棄却
一 舊刑訴法四〇三條において、原判決の刑より重い刑を言渡すことができないと規定した趣旨は、言渡刑のみに關するものであつて、控訴審が原判決の認定したところより重い法廷刑の罪に當る犯罪事實を認定してはならないという意味でないことについては當裁判所のしばしば判決するところである。それゆえ、原審が本件公訴事實につき漂流物横領罪…
事件番号: 昭和23(れ)745 / 裁判年月日: 昭和23年12月14日 / 結論: 棄却
一 連續一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには各個の行爲の内容を一々具體的に判示することを要せず數多の行爲に共通した犯罪の手段方法その他の事實を具體的に判示する該其連續した行爲の始期終期、回數等を明らかにし且つ財産上の犯罪であつて被害者又は賍額に異同があるときは被害者中ある者の氏名を表示する外他は員數を掲げ賍額の合計…