一 第一審判決に、併合罪の刑の加重をするにあたり刑法一四条を適用しなかつた違法があつても、被告人に対するその宣告刑が正当な処断刑の範囲内にあり、かつ、被告人の犯罪事実の内容その他情状に徴し右宣告刑が重きに過ぎるものと認められないときは、右違法が判決に影響を及ぼすこと明らかであるとはいえない。 二 第一審第九回公判調書中の「公判をした裁判所及び裁判官」欄に「金沢地裁小松支部乙」とあり、また「裁判所書記官」欄に「甲」とあるのは、同公判調書の末尾に作成者として金沢地方裁判所小松支部裁判所書記官乙の署名および押印があり、また、裁判官認印欄に「甲」の認印があること、ならびに第一審のその余の公判調書および判決書の各記載に徴すれば、それぞれ「金沢地方裁判所小松支部甲」および「乙」の単なる誤記にすぎないと解するのが相当である。
一、併合罪の刑の加重をするにあたり刑法一四条を適用しなかつた違法と判決に及ぼす影響 二、公判調書中の「公判をした裁判所及び裁判官」欄ならびに「裁判所書記官」欄の各記載が単なる誤記と認められた事例
刑法14条,刑訴法335条1項,刑訴法380条,刑訴法48条,刑訴法52条,刑訴規則44条
判旨
第一審判決において併合罪等の加重に関し刑法14条の適用を掲記しなかった違法があっても、宣告刑が正当な処断刑の範囲内にあり、情状に照らし不当に重くない限り、判決に影響を及ぼすべき明らかな違法とはならない。
問題の所在(論点)
併合罪等の加重において刑法14条の適用を掲記しなかった法令適用の不備は、宣告刑が処断刑の範囲内にある場合であっても、判決に影響を及ぼすべき明らかな違法として破棄事由となるか。
規範
第一審判決において、併合罪の加重等を行う際に刑法14条(有期刑の加重限度)の適用を掲記しないことは、法令適用の摘示として不備であり違法である。しかし、刑訴法上の上告理由等となるためには、その違法が「判決に影響を及ぼすこと明らか」であることを要する。具体的には、宣告刑が正当な処断刑の範囲内に留まっており、かつ事案の内容や情状に照らして刑の量定が不当に重すぎると認められない場合には、形式的な適用条文の掲記漏れは判決の結果を左右するものとはいえない。
事件番号: 昭和28(あ)5150 / 裁判年月日: 昭和30年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に無用の法令適用(刑法14条)の誤りがあっても、それが刑の加重等の実質的な不利益をもたらさない場合には、原判決を破棄すべき理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人Aは窃盗および贓物故買の罪に問われた。第一審判決は、これらの罪に対して刑法14条(併合罪の加重等に関する規定)を適用したが、原審…
重要事実
被告人の各罪について累犯加重及び併合罪の加重を行う際、第一審判決は刑法14条の適用を明示しなかった。弁護人は、この掲記漏れは判例(名古屋高裁昭和25年判決)に違反し、判決を破棄すべき違法であると主張して上告した。なお、一審の宣告刑は懲役6月及び罰金2万円であった。
あてはめ
本件において、第一審判決が刑法14条を適用した旨を掲記しなかった点には違法がある。しかし、被告人に言い渡された懲役6月及び罰金2万円という刑は、加重後の正当な処断刑の範囲内に収まっている。また、犯罪事実の内容や記録上の情状を考慮しても、この宣告刑が重きに過ぎるものとは認められない。したがって、条文の掲記漏れという形式的な違法は、判決の実質的な結論を左右するもの(影響を及ぼすことが明らか)とはいえない。
結論
第一審判決を維持した原判決の結論は正当であり、所論の判例(高裁判例)は本判決により変更される。上告棄却。
実務上の射程
刑事訴訟法における「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」の判断基準を示す事案である。答案上は、形式的な手続違法や法令適用の不備があっても、結論としての量刑が妥当であれば、直ちに破棄事由とはならないという論理(実質的妥当性の重視)として活用できる。特に処断刑の範囲内であるか否かは重要なメルクマールとなる。
事件番号: 昭和25(あ)1017 / 裁判年月日: 昭和26年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法の累犯加重規定は、前科のある者に対して重い刑を科すものであるが、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するものではない。 第1 事案の概要:上告人は累犯加重規定の適用を受けて有罪判決を言い渡された。これに対し、弁護人は累犯加重規定そのものが憲法14条に違反し違憲であると主張して上告した。 第2 …