第一審裁判所が判決を言渡した昭和二五年一〇月二四日当時においては、所論の確定判決によつて言渡された三年間の執行猶予期間は未だ経過していなかつたものであるから、右確定判決のあつた犯罪とその確定判決前の本件窃盗並びに賍物牙保の各罪とを併合罪の関係ありとし未だ裁判を経ざる右窃盗、賍物牙保の各罪につき、併合罪の加重をなして処断した第一審判決に違法の存しないことは勿論である。
懲役刑の執行を猶予する旨の確定判決とその前の犯罪とは刑法第四五条後段の併合罪か(右執行猶予期間が満了していない場合)
刑法25条,刑法45条,刑法235条,刑法256条2項
判旨
確定判決前の余罪を併合罪として処断する際、第一審判決時に他の確定判決の執行猶予期間が経過していなければ、控訴審判決前に当該期間が経過したとしても、第一審判決を違法として破棄する必要はない。
問題の所在(論点)
刑法45条後段の併合罪関係にある罪について、第1審判決後に併合罪の一方となる確定判決の執行猶予期間が経過した場合、控訴審において第1審判決を併合罪の扱いに係る違法があるとして破棄すべきか(判断基準時の問題)。
規範
刑法45条後段の併合罪において、確定判決を経た罪とそれ以前に犯した罪とを併合罪として処断する場合、その判断基準時は第1審判決時である。第1審判決時に執行猶予期間が経過していない以上、その後に猶予期間が経過したとしても、第1審判決の併合罪加重等の判断に違法は存しない。
重要事実
被告人は窃盗および賍物牙保の罪を犯したが、これらは別件の確定判決(懲役・執行猶予3年)に係る罪の確定前に犯されたものであった。破棄差戻後の第1審裁判所が判決を言い渡した時点(昭和25年10月)では、別件の執行猶予期間は未だ経過していなかった。そのため、第1審は本件各罪と別件の罪とを併合罪(刑法45条後段)の関係にあるとして併合罪加重を行い処断した。その後、被告人が控訴し、控訴審(原審)の判決言い渡し前に、別件の執行猶予期間が経過した。
事件番号: 昭和44(あ)1853 / 裁判年月日: 昭和45年9月29日 / 結論: 棄却
刑法二七条によつて、執行猶予を言い渡した確定裁判による刑の言渡がその効力を失つても、そのことは同法四五条後段の併合罪関係の成否とは相関しない。
あてはめ
第1審判決時においては、別件の執行猶予期間は経過しておらず、本件各罪と別件の罪が併合罪の関係にあることは明らかである。したがって、第1審が併合罪加重をなして処断したことに違法はない。被告人は控訴したが、控訴審において証拠採否や量刑不当のみを主張している場合、控訴審判決前に執行猶予期間が経過したという事実があったとしても、適法な第1審判決を維持し、控訴を棄却した原判決に違法はないと解される。
結論
第1審判決時に執行猶予期間が経過していない以上、併合罪として処断した第1審判決は適法であり、控訴審がこれを維持したことに違法はない。上告棄却。
実務上の射程
併合罪(刑法45条後段)の成否や加重の判断基準時は、原則として事実審の判決時(第1審)であることを示唆する。執行猶予期間の経過による刑の言い渡しの効力喪失(刑法27条)が判決後であっても、遡って判決の適法性に影響を及ぼさないことを確認する際に有用である。
事件番号: 昭和23(れ)2036 / 裁判年月日: 昭和24年5月17日 / 結論: 棄却
憲法第三七條第一項に所謂公平な裁判所の裁判というのは、其組織構成等について偏頗のおそれのない裁判所の裁判という意味であつて、個々の事件について、法律の誤解又は事實の誤認等により、たまたま被告人に不利益な裁判がなされても、それが一々同條にふれる憲法違反の裁判といい得ないという事並に憲法第三七條第一項の規定を以て、刑の言渡…