憲法第三七條第一項に所謂公平な裁判所の裁判というのは、其組織構成等について偏頗のおそれのない裁判所の裁判という意味であつて、個々の事件について、法律の誤解又は事實の誤認等により、たまたま被告人に不利益な裁判がなされても、それが一々同條にふれる憲法違反の裁判といい得ないという事並に憲法第三七條第一項の規定を以て、刑の言渡が公正妥當でない場合には刑訴應急措置法第一三條第二項の規定にかかわらず、上告を許した趣旨であると解することはできないということは當裁判所の判例とするところであつて今これを改める必要は認められない。(昭和二二年(れ)第一七一號同二三年五月五日大法廷判決、昭和二二年(れ)第一三八號同二三年六月九日大法廷判決参照)
憲法第三七條第一項に所謂「公平な裁判所の裁判」と量刑不當を理由とする上告の適否
刑法37條1項,刑訴應急措置法13條2項
判旨
憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、裁判所の組織や構成において偏頗のおそれがないことを指し、個別の裁判における法解釈の誤りや事実誤認、あるいは量刑の不当をもって直ちに憲法違反と解することはできない。
問題の所在(論点)
憲法37条1項の「公平な裁判所」の意義、および個別の事件における法律の誤解・事実誤認・量刑の不当が同条違反を構成するか。
規範
憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、その組織構成等について偏頗のおそれのない裁判所を意味する。したがって、個々の事件において、法律の誤解または事実の誤認等により、たまたま被告人に不利益な裁判がなされたとしても、そのことのみをもって直ちに同条に違反する不公平な裁判とはいえない。また、刑の言渡しが公正妥当でないことを理由として、当然に上告を許容する趣旨でもない。
重要事実
被告人は、過去に窃盗罪により懲役1年、執行猶予4年の判決を受け、その猶予期間中であった。しかし、被告人はさらに窃盗罪および贓物牙保罪を犯した。これに対し、原審は懲役10月および罰金1000円の刑を言い渡した。被告人側は、この量刑が不当に重く、憲法37条1項の「公平な裁判所」による裁判に反すると主張して上告した。
あてはめ
被告人は執行猶予期間中に再犯(窃盗および贓物牙保罪)を犯している。このような前科および犯行の態様に鑑みれば、原審が言い渡した懲役10月および罰金1000円という刑罰の内容が、客観的にみて不公平であるとか、過酷であるということはできない。したがって、本件裁判が憲法37条1項の趣旨に反する組織的・構成的な偏頗性を有するものとは認められず、単なる量刑不当の主張は憲法違反の理由には当たらない。
結論
憲法37条1項の「公平な裁判所」の解釈を誤るものではなく、本件の量刑も不当とはいえないため、上告を棄却する。
実務上の射程
憲法37条1項の「公平な裁判所」の意義を組織的・構造的な公平性に限定したリーディングケースである。答案上は、裁判官の除斥・忌避や裁判の公示等の制度的保障の根拠として言及する際に有用であり、個別の判断ミスが直ちに憲法違反になるわけではないという限界を示す際にも活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)5636 / 裁判年月日: 昭和29年3月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項に規定される「公平な裁判所の裁判」とは、裁判所の構成その他において、偏頗のおそれがない裁判所による裁判を指す。 第1 事案の概要:被告人が、下級審の判決に対して事実誤認や量刑不当を理由に上告を申し立てた事案。弁護人は、上告趣意において「公平な裁判所の裁判」を受ける権利の侵害(憲法違反…
事件番号: 昭和28(あ)42 / 裁判年月日: 昭和28年7月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、主観的に裁判の内容が不公平であると思料される裁判所を指すものではない。また、実刑の言渡しをすることも憲法13条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告人Bが、実刑を言い渡されたこと等に不服を抱き上告した事案。被告人側は、実刑の言渡しが憲法13条…