判旨
併合罪の関係にある数罪の一部につき既に執行猶予付きの確定判決がある場合であっても、残余の罪について当然に執行猶予を言い渡さなければならないわけではなく、裁判所の裁量により実刑を言い渡すことも可能である。
問題の所在(論点)
刑法25条1項の執行猶予の可否に関連し、併合罪の関係にある一部の罪について既に執行猶予の確定判決がある場合、残余の罪についても必ず執行猶予を言い渡さなければならないか。
規範
刑法25条1項の執行猶予の言渡しは、被告人の情状、再犯の恐れ、社会復帰の可能性等を総合的に考慮して決すべき裁判所の裁量に属する。併合罪(刑法45条)の関係にある一部の罪について既に執行猶予付きの確定判決が存在する場合であっても、他の一部の罪について法律上の要件を欠かない限り、実刑を言い渡すか執行猶予を付すかは依然として裁判所の合理的な裁量に委ねられている。
重要事実
被告人は併合罪の関係にある数罪を犯したが、そのうちの一部については既に執行猶予を付した判決が確定していた。残余の罪について審理した第一審裁判所は、被告人に対して実刑を言い渡し、原審(高等裁判所)もこの量刑を相当として支持した。これに対し弁護人は、一部に執行猶予の確定判決がある以上、残余の罪についても執行猶予を言い渡すべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原判決は第一審の実刑判決が相当であると判断したにとどまり、確定判決の存在によって「絶対に執行猶予を言い渡すことができない」という誤った法的判断を下したわけではない。また、先行する確定判決において執行猶予が付されたという事実は、後続の裁判において情状として考慮され得る一事情にすぎず、裁判所の裁量を拘束して「悉く執行猶予の言渡しをしなければならない」とする法的根拠は存在しない。したがって、量刑判断において実刑を選択した原判決に法的な誤りはない。
結論
一部の罪に執行猶予の確定判決があっても、他の一部の罪について実刑を言い渡すことは可能であり、量刑に裁量の逸脱がない限り適法である。
実務上の射程
併合罪の一部が先行して確定している場合の刑法25条1項の適用関係について、裁判所の広範な裁量を認めたものである。答案上は、分離公判等で一部が確定済みの場合の量刑判断において、裁判所は先行判決に拘束されず、独立して情状を評価できる旨を示す際に活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)2459 / 裁判年月日: 昭和31年5月30日 / 結論: 棄却
一 刑法第二五条第二項は、執行猶予の期間内さらに罪を犯した場合にその刑の執行猶予を言渡すときの条件のみを規定したものであつて、いわゆる余罪につき刑の執行猶予を言い渡す場合の条件までをも規定したものではない。 二 (裁判官斎藤悠輔の小数意見) 刑法二五条二項の一年以下の懲役又は禁錮の条件はいわゆる余罪に対すると猶予の期間…