判旨
執行猶予の付与に関する判断は、原則として事実審の裁量に属する事項であり、執行猶予を付さなかったことが単なる量刑不当の主張に帰する場合、それは適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
事実審の裁判所が、法律上の制限がないにもかかわらず執行猶予を付さなかったことが、適法な上告理由(法令違反等)となるか。
規範
刑法25条に基づく執行猶予の付与は、裁判所の裁量権に委ねられている。したがって、法律上執行猶予を付し得ない事案であるとの誤認がない限り、執行猶予を付さなかったことへの不服は、実質的に量刑不当を主張するものであり、刑事訴訟法405条所定の上告理由には該当しない。
重要事実
上告人は、第一審が本来執行猶予を付すべき事案であるにもかかわらず、法律上これを付し得ないものと誤認して実刑を科したと主張した。また、原判決(控訴審)も同様の見解の下に第一審判決を維持したとして上告を申し立てた。さらに、刑法25条の解釈が最高裁の判例と異なるとも主張したが、具体的な判例の指摘はなかった。
あてはめ
記録及び公判調書を検討しても、第一審裁判所が執行猶予を付し得る事案を付し得ないものと判断した形跡は認められない。また、原審もそのような誤認に基づいて第一審判決を維持したとは認められない。結局のところ、弁護人の主張は「本件事案は執行猶予を付すべきものである」という個別の量刑判断に対する不服に帰する。加えて、判例違反の主張についても具体的な指摘を欠いている。
結論
本件における執行猶予不付与の主張は、単なる量刑不当の主張であり適法な上告理由には当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、量刑に関する不服を上告理由とするには、刑法25条の解釈誤りや前提となる欠格事由の誤認など、明確な法令違反の構成が必要となる。単に「執行猶予を付すべきであった」とする主張は、刑訴法411条の職権破棄事由(著しく刑の量定が不当)に該当する場合を除き、排斥される。
事件番号: 昭和25(れ)1264 / 裁判年月日: 昭和25年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が刑の執行を猶予しないことは、裁判所の広範な裁量に委ねられており、それが直ちに法令違反となることはない。 第1 事案の概要:被告人が刑の執行猶予を付されなかったことに対し、弁護人が原判決の判断には法則に反する点があると主張して上告を提起した事案。判決文からは具体的な犯行態様等の事実は不明であ…