論旨は原判決は大審院の判例に違反するものである旨主張するのであるが、所論にいう大審院の判例なるものを毫も具体的に摘示していないから、原判決がはたして大審院の判例に違反しているか否かを判定するに由がなく、従つて論旨は明らかに刑訴規則第二五三条に違反し不適法のものである。されば論旨は刑訴四〇五条第三号にあたらない。
判例違反の主張を具体的に摘示しない上告の適否
刑訴法405条3号,刑訴規則253条
判旨
上告理由として判例違反を主張する場合には、違反するとされる判例を具体的に摘示する必要があり、これを欠く場合は適法な上告理由とならない。また、執行猶予を付さなかった原判決の量刑判断が当然に刑訴法411条の職権破棄事由(量刑不当)に該当するわけではない。
問題の所在(論点)
具体的な判例の特定を欠く判例違反の主張が、刑訴法405条3号の上告理由として適法か。また、執行猶予を付さなかったことが刑訴法411条による職権破棄事由に該当するか。
規範
刑事訴訟法405条3号に基づく判例違反を上告理由とする場合、刑事訴訟規則253条に基づき、違反とされる判例を具体的に摘示した上告趣意書を提出しなければならない。これに反する主張は不適法であり、上告理由を構成しない。また、量刑不当を理由とする職権破棄(刑訴法411条2号)は、原判決の刑の量定が著しく不当であると認められる場合に限られる。
重要事実
被告人が原判決に対して上告を提起した事案。弁護人は、上告趣意において「原判決は大審院の判例に違反する」と主張したが、具体的な判例の摘示を欠いていた。また、原審が執行猶予の請求を排斥したことを捉え、量刑が不当である旨を主張した。
あてはめ
弁護人の主張は、違反とされる大審院の判例を毫も具体的に摘示していない。これは刑訴規則253条に違反し、適法な上告理由(刑訴法405条3号)を構成しない。また、原判決が執行猶予を付すべきとの控訴趣旨を排斥した点についても、記録を精査してもなお、量刑が甚だしく不当であるとはいえず、刑訴法411条を適用すべき状況にはない。
結論
本件上告は不適法であり、かつ職権破棄の必要性も認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
上告趣意書の形式的要件(判例特定義務)を確認した事例である。実務上、判例違反を主張する際は、年月日や裁判集の巻号等の特定が不可欠であることを示す。また、量刑不当による職権破棄のハードルが極めて高いことを再認させるものである。
事件番号: 昭和25(あ)323 / 裁判年月日: 昭和26年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる訴訟法違反や量刑不当の主張は、刑事訴訟法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対し、訴訟手続に法令の違反があること(訴訟法違反)および刑の量定が不当であること(量刑不当)を理由として上告を申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):刑事訴訟法405条…