原判決が量刑の一事情として判示の事情と共に、本件犯罪が前刑の執行猶予期間内の犯行であることをも斟酌すれば第一審の科刑は不当でないと判示したに止り、所論の前科あるものは常に執行猶予を言渡し得ないとの法律判断をしたものではないときは、憲法一三条、一四条違反の主張はその前提を欠く。
憲法違反の主張が前提を欠く一事例
憲法13条,憲法14条,刑法25条
判旨
前刑の執行猶予期間内に犯罪が行われた事実は、刑の量定において被告人に不利益な情状として斟酌することができ、それをもって直ちに執行猶予を言い渡し得ないとする法律判断を伴うものではない。
問題の所在(論点)
刑の量定において、犯行が前刑の執行猶予期間内に行われた事実を不利益な情状として考慮することは許されるか。また、それは「前科があれば常に執行猶予を認めない」という法律判断を意味するか。
規範
裁判所が刑を量定するにあたり、犯罪が前刑の執行猶予期間内に行われたという事実を、被告人にとって不利な量刑上の情状(情状に関する事実)の一つとして考慮することは適法である。これは、特定の法的要件として執行猶予を画一的に禁ずる趣旨ではなく、個別具体的な事案における裁量判断の要素となり得る。
重要事実
被告人は前刑の執行猶予期間中に本件犯罪に及んだ。原審は、量刑の一事情として、他の諸事情と共に「本件犯罪が前刑の執行猶予期間内の犯行であること」を斟酌し、第一審の科刑(実刑判決)は不当ではないと判断した。これに対し、弁護側は「前科がある者は常に執行猶予を言い渡し得ないとする法律判断を示したものであり不当である」と主張して上告した。
あてはめ
原判決は、本件犯罪が前刑の執行猶予期間内であるという事実を、単に「量刑の一事情」として考慮したに過ぎない。これは刑法が裁判所に認めた量刑裁量の範囲内における情状評価であり、弁護人が主張するような「前科がある者は常に執行猶予を言い渡し得ない」という一般化した法律上の原則を提示したものではないと解される。
結論
前刑執行猶予期間中の犯行であることを量刑上の情状として考慮することは適法であり、上告は棄却される。
実務上の射程
量刑論における情状評価の適法性に関する判例である。答案上は、執行猶予の可否や刑の重さを論じる際、再犯可能性や規範意識の鈍麻を示す具体的事実(前刑の猶予期間中であること等)を、裁判所の裁量判断の基礎となる「情状」として引用する際の根拠となる。
事件番号: 昭和27(あ)1471 / 裁判年月日: 昭和27年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予を言い渡さない判決は憲法に違反するものではなく、また、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が上告審において、第一審・控訴審判決が執行猶予を言い渡さなかったこと等について、憲法違反および刑訴法411条の職権破棄事由がある旨を主張して争った事案である。 第…