刑の執行猶予期間中に犯した罪について右執行猶予を付せられた前刑があるからとして累犯加重の上処断することは、刑訴第四一一条第一号にあたる。
刑訴第四一一条第一号にあたる一事例
刑法56条,刑法57条,刑訴法411条1号
判旨
執行猶予期間中に犯した罪については、前罪の懲役刑の執行を終わったものとはみなされないため、刑法56条1項の累犯加重を適用することはできない。
問題の所在(論点)
刑法56条1項所定の「懲役に処せられた者がその執行を終わった」という要件について、執行猶予期間中に罪を犯した場合に再犯としての累犯加重を適用できるか。
規範
刑法56条1項にいう「懲役に処せられた者がその執行を終わった日……から五年以内にさらに罪を犯した」とは、現実に刑の執行を終了したか、またはこれと同視し得る状態にあることを要する。執行猶予期間中の犯行は、いまだ前罪の刑の執行を終えていない状態での犯行であるから、再犯加重(累犯)の要件を欠く。
重要事実
被告人は、昭和24年に常習賭博罪により懲役4月、5年間の執行猶予の判決を受けた(後に政令により懲役3月、3年9月の執行猶予に減刑)。被告人は、その執行猶予期間中に本件犯行(窃盗等)を犯した。第一審判決は、この前科があることを理由に、刑法56条および57条を適用して累犯加重を行い、被告人を懲役8月に処した。
あてはめ
被告人の前罪は執行猶予付判決であり、本件犯行はその猶予期間内に行われている。この場合、前罪の刑の執行は現実に行われておらず、また「執行を終わった」とみなすべき法的根拠も存在しない。したがって、被告人は「刑の執行を終わった日から五年以内」に罪を犯した者には該当せず、刑法56条の累犯加重を適用することは誤りである。
結論
執行猶予期間中の犯行に累犯加重を適用した原判決および第一審判決には、刑法56条の解釈を誤った違法がある。よって、これらを破棄し、累犯加重を行わずに懲役5月に処する。
実務上の射程
累犯(再犯)の成立要件における「執行終了」の意義を明確にした事例である。執行猶予中や仮釈放中の犯行については、累犯加重の対象とならない点に留意が必要である。答案作成上は、前科の刑期が終了しているか、あるいは免除されているかを正確に確認し、時系列に沿って要件該当性を検討する際の基礎となる。
事件番号: 昭和28(さ)2 / 裁判年月日: 昭和28年3月20日 / 結論: 破棄自判
原判決において当時被告人の判示前科の刑が執行猶予中であることを認定しながら、刑法五六条、五七条を適用して累犯加重をした上被告人を懲役一年に処する旨の言渡をなしたことは、右各法条の適用を誤つた違法があり、本件非常上告は理由があるのみならず、原判決は被告人のため不利益であること明らかであるから、刑訴四五八条一号により原判決…