刑法五七条を適用すれば、同五六条を引用しなくとも累犯加重の刑期は明瞭であり、法律によらずに刑を加重したと非難することはできない。
累犯加重をするに当つて刑法五七条、五九条のみを適用し、同法五六条の適用を遺脱した判決の適否
刑法56条,刑法57条
判旨
判決において刑法57条を適用すれば、同法56条を直接引用しなくても累犯加重の刑期は明瞭であり、訴訟手続上の違法は認められない。
問題の所在(論点)
刑法57条に基づき累犯加重を行う際、判決書において刑法56条を併せて引用する必要があるか。また、その欠如が判決に影響を及ぼす訴訟法違反(理由不備等)となるか。
規範
刑法57条(再犯の加重)を適用して刑を科す場合、その適用関係が判決上明示されていれば足り、累犯の定義規定である刑法56条を併せて引用しなくとも、処断刑の範囲を特定するに足りる適法な判決といえる。
重要事実
被告人の上告審において、弁護人は、第一審判決が刑法56条を引用せずに累犯加重を行ったことに対し、憲法違反および訴訟法違反を主張して上告した。原審(二審)ではこの点に関する主張および判断はなされていなかった。
あてはめ
事件番号: 昭和52(あ)1323 / 裁判年月日: 昭和52年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】累犯加重を定める刑法56条1項、57条の規定は、法の下の平等を定める憲法14条1項および二重処罰を禁止する憲法39条後段に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、以前に懲役刑に処せられた前科があったが、その執行終了の日から5年以内にさらに罪を犯した。裁判所はこれを刑法56条1項の累犯に当たると判…
判決書において刑法57条の適用が明示されている場合、同条に基づいて刑が加重されることは法的に自明である。累犯の具体的要件を定める刑法56条は57条の前提となる規定にすぎないため、57条を適用すれば、引用がなくとも累犯加重後の刑期の内容は十分に明瞭となる。したがって、判決の結論に影響を及ぼすような手続上の瑕疵は存在しない。
結論
本件上告は棄却される。刑法57条の適用により累犯加重の刑期が特定されている以上、刑法56条の引用を欠いたとしても違法ではない。
実務上の射程
罪数や累犯などの刑の加減例に関する判決書の記載において、実体法上の効果(加重)を定める条文が引用されていれば、その前提規定の欠如は直ちに破棄事由とはならないことを示す。実務上は予備的な論点であるが、罪刑法定主義や判決の明確性の観点から論じられる際の限界事例として機能する。
事件番号: 昭和29(あ)2096 / 裁判年月日: 昭和29年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法56条及び57条の再犯加重規定は、再犯者であるという事由に基づき新罪の法定刑を加重するものであり、前犯の確定判決を変更したり重ねて刑を科すものではないため、憲法39条の一事不再理の原則に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、刑法56条所定の再犯にあたるとして、同法57条に基づき再犯加重を適…