原判決において当時被告人の判示前科の刑が執行猶予中であることを認定しながら、刑法五六条、五七条を適用して累犯加重をした上被告人を懲役一年に処する旨の言渡をなしたことは、右各法条の適用を誤つた違法があり、本件非常上告は理由があるのみならず、原判決は被告人のため不利益であること明らかであるから、刑訴四五八条一号により原判決を破棄し、被告事件につき更に判決をする。
非常上告につき原判決を破棄して更に判決をした一事例。(執行猶予中の前科刑に対し累犯加重をした場合)
刑法25条,刑法56条,刑法57条,刑訴法411条
判旨
執行猶予中の前科は、刑法56条に規定する累犯加重の要件である「懲役の執行を終わった」場合等に該当しないため、累犯加重を適用することは違法である。
問題の所在(論点)
執行猶予期間中に更に罪を犯した場合に、刑法56条及び57条に基づく累犯加重を適用することができるか。すなわち、執行猶予中の前科が累犯の要件を満たすかが問題となる。
規範
刑法56条1項に定める累犯とは、懲役に処せられた者が「その執行を終わった日」又は「執行の免除を得た日」から5年以内に、更に罪を犯し、有期懲役に処せられるべき場合を指す。したがって、前科の刑が執行猶予中である場合には、未だ「執行を終わった」とも「免除を得た」ともいえないため、同条及び57条による累犯加重を適用することはできない。
重要事実
被告人は、昭和24年9月に窃盗罪により懲役1年6月、4年間の執行猶予に処せられていた。その後、執行猶予期間中の昭和27年に再び2件の窃盗を犯した。第一審(原判決)は、被告人が執行猶予中であることを認定しながら、刑法56条及び57条を適用して累犯加重を行い、懲役1年に処した。この判決は確定したが、検事総長が法令適用の誤りを理由に非常上告を申し立てた。
あてはめ
本件被告人の前科は、懲役1年6月、執行猶予4年というものであり、本件犯行時においてその猶予期間中であった。累犯加重が認められるためには、前刑の執行を終了しているか免除されている必要があるが、執行猶予中の者はそのいずれにも該当しない。それにもかかわらず、原判決が累犯加重を適用して被告人を懲役1年に処したことは、刑法56条及び57条の解釈適用を誤ったものであり、被告人にとって不利益な違法があるといえる。
結論
原判決を破棄する。累犯加重を適用せず、併合罪の規定のみを適用して、被告人を懲役6月に処する。
実務上の射程
累犯の要件(刑法56条)に関する基本判例である。執行猶予中の再犯は、累犯加重の対象外であることを明確に示している。司法試験においては、罪数や刑の加減算の論点において、前科の状況(執行終了か猶予中か)を的確に分析し、累犯加重の可否を判断する際の基礎知識として重要である。
事件番号: 昭和25(さ)34 / 裁判年月日: 昭和25年9月5日 / 結論: 破棄自判
記録によれば、京都簡易裁判所所は昭和二五年二月一五日の判決において、被告人に對して窃盜の事實を認定したが、被告人は昭和二二年六月三〇日大阪地方裁判所において窃盜罪として科せられた懲役一年六月の刑の執行を當時既に終つたものとして、刑法第五六條および第五七條を適用し、被告人を懲役二年六月に處する旨の言渡をなし、右判決は同年…
事件番号: 昭和29(さ)3 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: その他
刑法第二五条第二項によれば、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあつても、その執行を猶予された者が、一年以下の懲役又は禁錮の言渡を受け情状特に憫諒すべきものであるときは再び執行を猶予することができるのであるが、一年を超える懲役又は禁錮の言渡を受けたときは、その執行を猶予することはできないのである。しかるに原判決は前示の如…
事件番号: 昭和23(そ)1 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 破棄自判
一 原判決の認めた前科は二年間その執行を猶豫せられたものであるのみならず昭和二〇年一〇月一七日勅令第五七九號大赦令によりその罪は赦免せられたものであること明白である。從つてその前科の刑の言渡は執行猶豫期間の終了を俟つまでもなく、即日將來に向つてその効力を失つたものといわねばならぬ。然るに原確定判決は、前述のごとくこの前…