一 原判決の認めた前科は二年間その執行を猶豫せられたものであるのみならず昭和二〇年一〇月一七日勅令第五七九號大赦令によりその罪は赦免せられたものであること明白である。從つてその前科の刑の言渡は執行猶豫期間の終了を俟つまでもなく、即日將來に向つてその効力を失つたものといわねばならぬ。然るに原確定判決は、前述のごとくこの前科の刑の言渡を消滅さざるものと誤認して累犯加重をしたものであるから結局不當に累犯加重の規定を適用した法令違反あるものといわざるを得ない。 二 刑訴第五二〇條第一號本文に從い原確定判決の法令を不當に適用した累犯加重部分を破毀すべきところ該部分は他の部分と不可分であるから原確定判決全部を破棄し同號但書に從い被告事件につき更らに判決を爲すべきものとする。
一 前科が大赦令により消滅したに拘わらず累犯加重の規定を適用した判決の違法性 二 確定判決の一部に法令の不當適用ある場合と刑訴第五二〇條による確定判決全部の破棄
刑法56條,恩赦令3條1號,刑訴法520條1號
判旨
前科とされる刑が大赦令により赦免された場合、その刑の言渡しは将来に向かって効力を失うため、当該前科を理由に刑法56条の累犯加重を適用することは法令違反となる。
問題の所在(論点)
大赦令により赦免された前科に基づき、刑法56条の累犯加重を適用して処断することの可否。
規範
刑の言渡しを受けた者が大赦令による赦免を受けた場合には、その刑の言渡しは、執行猶予期間の終了を待つまでもなく、即日将来に向かってその効力を失う。したがって、当該刑の執行終了等を前提とする累犯加重(刑法56条)を適用することはできない。
重要事実
被告人は、昭和23年に窃盗罪で起訴された。原審は、被告人が昭和20年に軍法会議で懲役8月に処せられその刑の執行を終えた前科があるものと認定し、刑法56条、57条を適用して累犯加重を行い、懲役1年6月の判決を言い渡した。しかし、実際には当該前科は執行猶予付判決であった上、昭和20年10月の大赦令により赦免された罪に該当するものであった。
事件番号: 昭和23(そ)2 / 裁判年月日: 昭和24年2月8日 / 結論: その他
右連続犯については、その一部について、さきに東京地裁において有罪の判決の言渡があり、その判決の確定したことは前述のとおりであるから、右確定判決の効力は、當然に、その連続犯の他の一部をなす本件犯罪にも及ぶものと云わなければならぬ。されば、本件公訴にかかる犯罪事實については、舊刑事訴訟法第三六三條第一號に從つて兔訴の言渡を…
あてはめ
本件における前科とされる罪は、昭和20年の大赦令(勅令第579号)により赦免されている。赦免されたことにより、当該刑の言渡しは即日将来に向かってその効力を失ったといえる。それにもかかわらず、原判決がこの前科の言渡しが消滅していないものと誤認し、累犯加重の規定を適用したことは、不当に法令を適用した違法があるものと解される。
結論
原判決を破棄し、累犯加重を行わない法定刑の範囲内で、被告人を懲役1年2月に処する。
実務上の射程
前科消滅(刑法34条の2)や恩赦がある場合の累犯加重の可否を判断する際の基礎となる判例である。答案上は、累犯加重の要件である「刑の執行を終わり又は執行の免除を得た後」という点に関し、大赦によって刑の言渡し自体の効力が失われている場合には、加重の基礎を欠くことを指摘する際に用いる。
事件番号: 昭和29(さ)3 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: その他
刑法第二五条第二項によれば、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあつても、その執行を猶予された者が、一年以下の懲役又は禁錮の言渡を受け情状特に憫諒すべきものであるときは再び執行を猶予することができるのであるが、一年を超える懲役又は禁錮の言渡を受けたときは、その執行を猶予することはできないのである。しかるに原判決は前示の如…
事件番号: 昭和28(さ)2 / 裁判年月日: 昭和28年3月20日 / 結論: 破棄自判
原判決において当時被告人の判示前科の刑が執行猶予中であることを認定しながら、刑法五六条、五七条を適用して累犯加重をした上被告人を懲役一年に処する旨の言渡をなしたことは、右各法条の適用を誤つた違法があり、本件非常上告は理由があるのみならず、原判決は被告人のため不利益であること明らかであるから、刑訴四五八条一号により原判決…
事件番号: 昭和29(さ)7 / 裁判年月日: 昭和30年2月24日 / 結論: 破棄自判
刑法第五条但書に基く刑の執行の軽減又は免除は、裁判所が、刑の言渡と同時に判決主文においてなすべきものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和26(あ)4780 / 裁判年月日: 昭和27年11月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数個の罪が併合罪として処断された後、その一部の罪が大赦により赦免された場合、上告審は職権により原判決を破棄し、赦免された罪について免訴、他の罪について刑を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、窃盗罪(刑法235条)と、臨時物資需給調整法および衣料品配給規則違反(無登録衣料品販…