右連続犯については、その一部について、さきに東京地裁において有罪の判決の言渡があり、その判決の確定したことは前述のとおりであるから、右確定判決の効力は、當然に、その連続犯の他の一部をなす本件犯罪にも及ぶものと云わなければならぬ。されば、本件公訴にかかる犯罪事實については、舊刑事訴訟法第三六三條第一號に從つて兔訴の言渡をなすべきであるにもかかわらず、被告人に對し、右犯罪につき、重ねて有罪の言渡をした佐倉支部の判決は違法である。
連続犯の一部についてなした確定判決の他の部分に對する効力
刑法55條,舊刑訴法363條1號
判旨
短期間内に同種の犯罪が反復累行されている場合、特段の事情がない限り単一の犯意継続による連続犯と認められ、確定判決の既判力はその一部をなす他の犯罪事実にも及ぶため、免訴すべきである。
問題の所在(論点)
確定判決に係る既判力の及ぶ範囲が問題となる。具体的には、確定判決を受けた窃盗事実と、その前後に反復された別個の窃盗事実が単一の犯意に基づく連続犯(一罪)と認められる場合、後者に対しても確定判決の効力が及び、刑事訴訟法337条1号(旧法363条1号)に基づき免訴すべきか。
規範
短期間内に同種の犯罪が反復累行されている場合には、特段の反対事情がない限り、それらは単一の犯意の継続下になされたもの(連続犯)と解するのが相当である。一罪の関係にある事実の一部について確定判決があるときは、その既判力は当該一罪の全部に及ぶため、他の事実について改めて公訴が提起された場合には免訴を言い渡すべきである。
重要事実
被告人は昭和22年10月23日頃に東京都内の駅で手提げ鞄を窃取し、同年12月8日に東京地裁で懲役1年(執行猶予3年)の有罪判決を受け、翌日確定した。しかし、被告人はそれ以前の同年8月31日から10月15日頃までの間にも、千葉県内で5回にわたり小麦や牛などの窃盗を行っていた。この千葉県内での窃盗事実(本件)について千葉地裁佐倉支部は昭和23年3月、改めて有罪判決を言い渡した。
事件番号: 昭和23(そ)1 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 破棄自判
一 原判決の認めた前科は二年間その執行を猶豫せられたものであるのみならず昭和二〇年一〇月一七日勅令第五七九號大赦令によりその罪は赦免せられたものであること明白である。從つてその前科の刑の言渡は執行猶豫期間の終了を俟つまでもなく、即日將來に向つてその効力を失つたものといわねばならぬ。然るに原確定判決は、前述のごとくこの前…
あてはめ
被告人が昭和22年8月末から10月中旬にかけて反復した本件窃盗事実は、既確定判決に係る同年10月23日の窃盗事実と時間的に極めて近接しており、かつ同種の犯罪が繰り返されている。特段の反対資料がない本件においては、これらは単一の犯意継続下になされた連続犯(改正前刑法55条)に該当するといえる。したがって、東京地裁の確定判決の効力は、連続犯の一部をなす本件犯罪事実にも当然に及ぶものと解される。
結論
本件窃盗事実は既確定判決の効力が及ぶ範囲内にあるため、重ねて有罪を言い渡した原判決は違法であり、被告人を免訴すべきである。
実務上の射程
現在は連続犯規定(旧刑法55条)が削除されているが、包括一罪の成否および既判力の客観的範囲に関する基本判例として機能する。短期間に同種犯行が繰り返される場合の「単一の犯意」の認定手法や、一罪の一部に生じた既判力が全体に及ぶ(一事不再理の効力)という実務上の大原則を示すものである。
事件番号: 昭和27(あ)2416 / 裁判年月日: 昭和27年9月12日 / 結論: 棄却
併合罪の関係にある一部の罪について確定裁判がなされても、その既判力は他の部分の罪には及ばないし、右両者の罪は同一の犯罪ではなく別個の犯罪であつて、後者の罪を審理裁判したことは確定判決に判示された前者の罪につき再び審理裁判をしたものということはできないから、憲法第三九条に違反しない。
事件番号: 昭和29(さ)3 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: その他
刑法第二五条第二項によれば、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあつても、その執行を猶予された者が、一年以下の懲役又は禁錮の言渡を受け情状特に憫諒すべきものであるときは再び執行を猶予することができるのであるが、一年を超える懲役又は禁錮の言渡を受けたときは、その執行を猶予することはできないのである。しかるに原判決は前示の如…