原判決は控訴申立の取下により、最早や審判すべからざる案件に對して爲されたもので、まさに法令に違反したものである。從つて本件非常上告はその理由あり、原判決は破毀を免れない。
控訴申立の取下をした案件に對し審判を爲した判決の違法
憲法39條2項,舊刑訴法520條1號,舊刑訴法521條
判旨
控訴の取下げによって第一審判決が確定し、訴訟関係が終了した後は、裁判所は当該事件について審判を行うことはできない。取下げの事実を看過して言い渡された控訴審判決は、審判すべきでない案件に対してなされたものであり、法令に違反する。
問題の所在(論点)
控訴の取下げにより第一審判決が確定した後に、裁判所がその事実を看過して言い渡した控訴審判決の効力、および「審判すべからざる案件」に対する判決の適法性が問題となる。
規範
控訴の取下げにより第一審判決が確定した場合、当該事件についての訴訟繋属は消滅する。訴訟繋属が消滅した「審判すべからざる案件」に対してなされた判決は、裁判権の行使を誤った法令違反(旧刑事訴訟法520条1号)として、非常上告の対象となる。
重要事実
被告人は第一審の懲役1年6月の判決に対し控訴を申し立てたが、その後、控訴申立てを取り下げた。これにより第一審判決は確定した。しかし、控訴審(前橋地裁)は控訴取下げの事実を看過して審理を継続し、被告人に対し懲役1年の判決を言い渡し、同判決もまた確定するに至った。
事件番号: 昭和24(そ)1 / 裁判年月日: 昭和24年5月19日 / 結論: その他
一 第一審の有罪判決に對し被告人から適法な控訴の申立をなし、ついでこれに對し檢事から附帶控訴の申立がなされた控訴審に繋屬中被告人から昭和二三年一一月一〇日附を以て「訴訟取消書」と題する控訴申立の取下書と認むべきものを同裁判所に提出し、該書面は翌一一日同裁判所に到達した。從つて、本件控訴事件は、主たる控訴申立の取下によつ…
あてはめ
本件では、被告人による控訴取下げにより、既に第一審判決が確定しており、控訴審における審判の対象は消滅している。にもかかわらず、原審がこの事実を看過して実体判決を言い渡したことは、訴訟関係が既に終了した案件に対して裁判を行ったことを意味する。したがって、当該判決は「最早や審判すべからざる案件に対して為されたもの」といえ、審判の基礎を欠く法令違反がある。
結論
原判決は法令に違反するため、非常上告には理由がある。よって、原判決を破棄する。
実務上の射程
刑事訴訟法458条1号(旧法520条1号)の「その被告事件の裁判が法律に違反したとき」の具体例を示す。控訴取下げによる確定後の二重裁判は、審判権がない状態での裁判として非常上告により是正されるべき対象となることを明示した点に意義がある。
事件番号: 昭和26(さ)1 / 裁判年月日: 昭和27年11月19日 / 結論: 棄却
一 監獄にいる被告人が監獄の長に対し控訴取下申立書を差し出したときは、控訴裁判所がその申立のあつたことを知ると否とにかかわらず、ただちに控訴取下の効力を生じる。 二 控訴取下後の控訴審判決は当然無効であつてその内容に副う効力を生じない。 三 控訴取下後の控訴審判決に対する非常上告は許されない。
事件番号: 昭和28(さ)2 / 裁判年月日: 昭和28年4月28日 / 結論: 棄却
累犯加重の事由とされた前科に関し、確定判決に事実認定上の違法(審理不尽等)があることを主張し、かつこれを前提として同判決における累犯加重の違法を主張することは、非常上告の理由とならない。
事件番号: 昭和23(そ)2 / 裁判年月日: 昭和24年2月8日 / 結論: その他
右連続犯については、その一部について、さきに東京地裁において有罪の判決の言渡があり、その判決の確定したことは前述のとおりであるから、右確定判決の効力は、當然に、その連続犯の他の一部をなす本件犯罪にも及ぶものと云わなければならぬ。されば、本件公訴にかかる犯罪事實については、舊刑事訴訟法第三六三條第一號に從つて兔訴の言渡を…
事件番号: 昭和25(さ)33 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
本件非常上告の理由とするところは、要するに昭和二四年一二月二八日名古屋簡易裁判所が言渡した判決において被告人は当時満一八才未満の少年であつたのに拘らず、満一八才以上の者と誤認したという事実認定非難を前提として手続違背を主張するものであつて、非常上告適法の理由とならないものである(昭和二五年(さ)第三九号同二六年一月二三…