本件非常上告の理由とするところは、要するに昭和二四年一二月二八日名古屋簡易裁判所が言渡した判決において被告人は当時満一八才未満の少年であつたのに拘らず、満一八才以上の者と誤認したという事実認定非難を前提として手続違背を主張するものであつて、非常上告適法の理由とならないものである(昭和二五年(さ)第三九号同二六年一月二三日第三小法廷判決)。
少年を少年でないものと認定して言渡した確定判決と非常上告の適否
刑訴法454条
判旨
非常上告は抽象的に法令適用の誤りを正すための手続であり、事実認定の誤りを前提として手続違背を主張することは非常上告の適法な理由とはならない。
問題の所在(論点)
事実認定の誤り(年齢の誤認)を前提として導かれる訴訟手続の違憲・違法が、刑事訴訟法454条にいう「事件の審判が法令に違反したとき」に該当し、非常上告の理由となるか。
規範
非常上告(刑事訴訟法454条)は、確定判決において事案の解決が法令に違反したことを是正し、法令適用の統一を図るための特別定数手続である。したがって、その目的は抽象的に法令適用の誤りを正すことにあり、個々の裁判における事実認定の誤りを是正することを目的とするものではない。
重要事実
被告人が満18歳未満の少年であったにもかかわらず、第一審判決(名古屋簡易裁判所)は被告人を満18歳以上の者と誤認し、少年法上の手続を履践せずに有罪判決を言い渡した。検事総長は、この年齢誤認に基づく事実認定の誤りが手続上の違法を招いたとして、非常上告を申し立てた。
事件番号: 昭和25(さ)38 / 裁判年月日: 昭和26年7月6日 / 結論: 棄却
本件非常上告の理由とするところは、要するに昭和二四年五月二八日倉吉簡易裁判所の言渡した判決において被告人は当時満一八才未満の少年であつたのに拘らず満一八才以上の者と誤認したという事実認定非難を前提として手続違背を主張するものであつて、非常上告の理由とならないものである(昭和二五年(さ)第三九号同二六年一月二三日第三小法…
あてはめ
本件における非常上告の理由は、裁判所が被告人の年齢を誤認したという「事実認定の非難」を前提とするものである。しかし、非常上告は法令適用の誤りを是正する制度であり、認定された事実を前提として法令の適用が正しいか否かを審査するものである。事実認定そのものの当否を争うことは、非常上告の本旨から外れるといわざるを得ない。したがって、事実認定の誤りに端を発する手続違背の主張は、非常上告の適法な理由としての要件を満たさないと解される。
結論
事実認定の誤りを前提とする手続違背の主張は、非常上告の理由にはならないため、本件非常上告は棄却される。
実務上の射程
非常上告の対象は「判決により確定した事実」を前提とした法令適用の是非に限られ、再審とは異なり事実認定の誤りを救済する手段ではないことを明示した。実務上、年齢誤認など客観的事実に反する認定があったとしても、それを理由に非常上告を申し立てることはできないという限界を示すものである。
事件番号: 昭和25(さ)30 / 裁判年月日: 昭和26年7月6日 / 結論: 棄却
所論窃盗被告事件の確定判決は裁判時において既に成年に達していた被告人に対し少年法を適用したことにはなるがそれは同裁判所が前記のように被告人が生年月日を偽つていたために被告人が成年であつたにかかわらずこれを少年と誤認したことに基因するのである。而して非常上告は抽象的に法規適用の誤を正すことを目的とするものであつて個々の裁…
事件番号: 昭和28(さ)2 / 裁判年月日: 昭和28年4月28日 / 結論: 棄却
累犯加重の事由とされた前科に関し、確定判決に事実認定上の違法(審理不尽等)があることを主張し、かつこれを前提として同判決における累犯加重の違法を主張することは、非常上告の理由とならない。