所論窃盗被告事件の確定判決は裁判時において既に成年に達していた被告人に対し少年法を適用したことにはなるがそれは同裁判所が前記のように被告人が生年月日を偽つていたために被告人が成年であつたにかかわらずこれを少年と誤認したことに基因するのである。而して非常上告は抽象的に法規適用の誤を正すことを目的とするものであつて個々の裁判の事実認定等の誤を是正することを目的とするものではないから(昭和二五年(さ)第三六号同年一一月八日大法廷判決参照)本件のように確定判決の事実認定を争いその事実認定非難を前提としてその審判が法令に違反したものとして非常上告をすることは許されないものと云わなければならない。
少年でない者を少年と認定して言渡した確定判決と非常上告の適否
旧刑訴法454条,少年法2条,少年法460条2項,少年法52条,少年法68条
判旨
非常上告は抽象的に法規適用の誤りを正すことを目的とするものであり、確定判決の事実認定を争い、その事実認定の誤りを前提として法令違反を主張することは許されない。
問題の所在(論点)
被告人が年齢を偽ったことにより、裁判所が成年者を少年と誤認して少年法を適用し不定期刑を科した場合、当該確定判決に「審判が法令に違反したとき」(刑訴法454条)があるとして非常上告を申し立てることができるか。
規範
非常上告(刑事訴訟法454条)の対象となる「審判が法令に違反したとき」とは、抽象的に法規適用の誤りを正すことを目的とするものであって、個々の裁判の事実認定等の誤りを是正することを目的とするものではない。
重要事実
被告人は窃盗被告事件において、偽名を用いるとともに生年月日を昭和6年11月15日と偽っていた。裁判所はこれを信じ、被告人を少年と誤認して少年法を適用し、不定期刑(10月以上2年以下の懲役等)を言い渡し、判決は確定した。しかし、確定後に被告人の本名および生年月日(昭和4年7月25日)が判明し、裁判時において被告人は既に成年に達していたことが明らかになった。
事件番号: 昭和25(さ)38 / 裁判年月日: 昭和26年7月6日 / 結論: 棄却
本件非常上告の理由とするところは、要するに昭和二四年五月二八日倉吉簡易裁判所の言渡した判決において被告人は当時満一八才未満の少年であつたのに拘らず満一八才以上の者と誤認したという事実認定非難を前提として手続違背を主張するものであつて、非常上告の理由とならないものである(昭和二五年(さ)第三九号同二六年一月二三日第三小法…
あてはめ
本件における少年法の適用は、被告人が生年月日を偽ったことに起因する「年齢の誤認」という事実認定の誤りに基づくものである。非常上告は、判決の前提となった事実関係を争い、その非難を前提として法令違反を主張する場合には適用されない。したがって、被告人が成年であったという新たな事実を前提に少年法の適用を法令違反とする主張は、事実認定の誤りを是正しようとするものにほかならず、非常上告の適法な理由とはなり得ない。
結論
本件非常上告は、事実認定の誤りを前提とするものであり許されないため、棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法上の非常上告の限定的な性格を明らかにした判例である。答案上では、法令適用が依拠した前提事実に誤りがあるに過ぎない場合には、再審の手続によるべきであり、非常上告の対象とはならないことを論じる際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和25(さ)33 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
本件非常上告の理由とするところは、要するに昭和二四年一二月二八日名古屋簡易裁判所が言渡した判決において被告人は当時満一八才未満の少年であつたのに拘らず、満一八才以上の者と誤認したという事実認定非難を前提として手続違背を主張するものであつて、非常上告適法の理由とならないものである(昭和二五年(さ)第三九号同二六年一月二三…
事件番号: 昭和48(さ)3 / 裁判年月日: 昭和48年12月24日 / 結論: 破棄自判
一 刑訴法四五八条一号但書にいう「原判決が被告人のため不利益であるとき」とは、原判決の誤りを是正してあらたに言い渡すべき判決が、原判決より被告人に利益なことが法律上明白である場合をいう。 二 本件におけるように、少年である被告人に対し言い渡された原判決の刑が懲役八月の定期刑であり、あらたに言い渡すべき刑が懲役六月以上八…