一 刑訴法四五八条一号但書にいう「原判決が被告人のため不利益であるとき」とは、原判決の誤りを是正してあらたに言い渡すべき判決が、原判決より被告人に利益なことが法律上明白である場合をいう。 二 本件におけるように、少年である被告人に対し言い渡された原判決の刑が懲役八月の定期刑であり、あらたに言い渡すべき刑が懲役六月以上八月以下の不定期刑であるときは、刑訴法四五八条一号但書にいう「原判決が被告人のため不利益であるとき」にあたる。
一 刑訴法四五八条一号但書にいう「原判決が被告人のため不利益であるとき」の意義 二 少年に対し定期刑を科した原判決が刑訴法四五八条一号但書にいう「被告人のため不利益であるとき」にあたるとされた事例
刑訴法458条1号
判旨
少年に対して定期刑を言い渡した確定判決は、少年法52条の不定期刑の規定に違反し、正しい法令を適用して言い渡すべき不定期刑が定期刑より利益であることが法律上明白な場合には、非常上告により破棄自判される。
問題の所在(論点)
刑訴法458条1号但書にいう「原判決が被告人のため不利益であるとき」の意義、および少年に対して不適法に定期刑を言い渡した確定判決を、非常上告手続において破棄自判すべきか。
規範
刑訴法458条1号但書の「原判決が被告人のため不利益であるとき」とは、原判決の認定した事実に正しい法令を適用してあらたに言い渡すべき判決が、原判決より利益なことが法律上明白である場合をいう。
重要事実
被告人は昭和29年6月生まれであり、昭和48年8月の原判決当時20歳に満たない少年であった。原判決は、2個の窃盗事実を認定し、併合罪加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役8月の定期刑に処し、これが確定した。しかし、少年法52条によれば、執行猶予を付さない限り、法定の範囲内で短期・長期を定めた不定期刑を言い渡さなければならない事案であった。
事件番号: 昭和25(さ)30 / 裁判年月日: 昭和26年7月6日 / 結論: 棄却
所論窃盗被告事件の確定判決は裁判時において既に成年に達していた被告人に対し少年法を適用したことにはなるがそれは同裁判所が前記のように被告人が生年月日を偽つていたために被告人が成年であつたにかかわらずこれを少年と誤認したことに基因するのである。而して非常上告は抽象的に法規適用の誤を正すことを目的とするものであつて個々の裁…
あてはめ
少年に対し懲役8月の定期刑を言い渡した原判決に対し、正しい法令(少年法52条)を適用してあらたに言い渡すべき刑は、犯情や原判決の刑を考慮すると「懲役6月以上8月以下」の不定期刑となる。この不定期刑は、その最短期間において刑期を終える可能性を包含する以上、懲役8月の定期刑よりも被告人にとって利益であることが法律上明白といえる。
結論
原判決は法令に違反し、かつ被告人に不利益であるため、これを破棄し、被告人を懲役6月以上8月以下の不定期刑に処する。
実務上の射程
非常上告において被告人事件を自判するための要件(被告人への不利益性)を定義した。実務上、定期刑と不定期刑の有利不利の比較において、不定期刑の短期が定期刑の刑期を下回る場合は「利益であることが明白」と判断される重要な指針となる。
事件番号: 昭和25(さ)38 / 裁判年月日: 昭和26年7月6日 / 結論: 棄却
本件非常上告の理由とするところは、要するに昭和二四年五月二八日倉吉簡易裁判所の言渡した判決において被告人は当時満一八才未満の少年であつたのに拘らず満一八才以上の者と誤認したという事実認定非難を前提として手続違背を主張するものであつて、非常上告の理由とならないものである(昭和二五年(さ)第三九号同二六年一月二三日第三小法…
事件番号: 昭和25(さ)33 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
本件非常上告の理由とするところは、要するに昭和二四年一二月二八日名古屋簡易裁判所が言渡した判決において被告人は当時満一八才未満の少年であつたのに拘らず、満一八才以上の者と誤認したという事実認定非難を前提として手続違背を主張するものであつて、非常上告適法の理由とならないものである(昭和二五年(さ)第三九号同二六年一月二三…
事件番号: 昭和24新(そ)1 / 裁判年月日: 昭和27年12月11日 / 結論: その他
一 少年法第五一条にいわゆる「一〇年以上一五年以下において懲役又は禁錮を科する」とは、一〇年から一五年までの間の定期の懲役または禁錮を科するという趣旨である。 二 無期刑をもつて処断すべき少年に対し、少年法第五一条を適用しながら、その解釈をあやまり懲役一〇年以上一五年以下の不定期刑を科した判決は、刑訴第四五八条第一号但…