累犯加重の事由とされた前科に関し、確定判決に事実認定上の違法(審理不尽等)があることを主張し、かつこれを前提として同判決における累犯加重の違法を主張することは、非常上告の理由とならない。
前科に関する事実認定上の違法と非常上告
刑訴法454条
判旨
非常上告は法令の解釈適用の統一を目的とするものであり、前科認定に関する審理不尽等の事実認定上の違法や、それを前提とする累犯加重の違法を主張することは、非常上告の理由とならない。
問題の所在(論点)
前科に関する事実認定の手続上の違法(審理不尽等)、および当該事実誤認を前提とする累犯加重適用の違法が、刑事訴訟法454条にいう「事件の審判が法令に違反したとき」として非常上告の理由になるか。
規範
非常上告は、法令の解釈適用を統一することを本来の目的とする制度である。したがって、①個々の具体的な事実認定過程における審理不尽等の違法を是正すること、および②事実認定の誤りを前提として、その当然の結果としてなされた法令適用(それ自体に誤りがないもの)を是正することは、いずれも非常上告の目的外であり、その理由とすることはできない。
重要事実
被告人Aに対し、原確定判決は前科の刑の執行終了を認定した上で累犯加重を適用した。検事総長は、原判決が証拠能力の乏しい証拠に基づき事実を認定したこと(審理不尽・手続上の過誤)を主張し、その事実誤認を前提とした累犯加重の適用は「法令適用の前提条件を欠く」ものであり、刑罰法令の適用を誤った審判法令違反に当たると主張して、非常上告を申し立てた。
事件番号: 昭和25(さ)38 / 裁判年月日: 昭和26年7月6日 / 結論: 棄却
本件非常上告の理由とするところは、要するに昭和二四年五月二八日倉吉簡易裁判所の言渡した判決において被告人は当時満一八才未満の少年であつたのに拘らず満一八才以上の者と誤認したという事実認定非難を前提として手続違背を主張するものであつて、非常上告の理由とならないものである(昭和二五年(さ)第三九号同二六年一月二三日第三小法…
あてはめ
本件で主張されている違法は、前科の執行終了時期という具体的な事実認定における審理不尽等の不備である。しかし、非常上告の趣旨に照らせば、このような個別の事実認定の過程や、認定された事実を前提とする法令適用の当否は、法令解釈の統一という目的から外れる。本件記録上も、前科調書等の記載に基づき執行終了を認めた原判決に不合理な点は認められず、結局は事後の調査に基づく事実誤認の主張に帰着する。したがって、これらを理由とする申し立ては適法な非常上告の理由を構成しない。
結論
本件非常上告を棄却する。前科認定に関する事実認定の不備や、それを前提とした累犯加重の違法は非常上告の理由とならない。
実務上の射程
非常上告の対象が「法令違反」に限定されることを明確にした判例である。再審が「事実誤認」の救済を目的とするのに対し、非常上告は「法令解釈の統一」を目的とするという制度趣旨の差異を論証する際に用いる。事実誤認から派生する法令適用ミスは非常上告の範疇に含まれないことを示す重要な規範である。
事件番号: 昭和25(さ)33 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
本件非常上告の理由とするところは、要するに昭和二四年一二月二八日名古屋簡易裁判所が言渡した判決において被告人は当時満一八才未満の少年であつたのに拘らず、満一八才以上の者と誤認したという事実認定非難を前提として手続違背を主張するものであつて、非常上告適法の理由とならないものである(昭和二五年(さ)第三九号同二六年一月二三…
事件番号: 昭和29(さ)4 / 裁判年月日: 昭和29年11月25日 / 結論: 破棄自判
昭和二九年法律五九号の附則二項は、同法施行前の犯罪については、同法施行後の犯罪と併合罪に当らない限り、右刑法二五条ノ二、一項前段の改正規定の適用がない旨を規定しているから、右法律五七号施行前のみの犯罪にかかる本件被告事件につき刑の執行猶予を言い渡す場合において、被告人を保護観察に対することを得ないものであることもまた明…