一 第一審の有罪判決に對し被告人から適法な控訴の申立をなし、ついでこれに對し檢事から附帶控訴の申立がなされた控訴審に繋屬中被告人から昭和二三年一一月一〇日附を以て「訴訟取消書」と題する控訴申立の取下書と認むべきものを同裁判所に提出し、該書面は翌一一日同裁判所に到達した。從つて、本件控訴事件は、主たる控訴申立の取下によつて同裁判所は最早審判することができなくなつたにかかわらず、同裁判所書記課においては、誤つて該書面を被告人に送達したため、同裁判所は前記控訴取下の事實を知るに由なく、同月一二日所論の有罪判決を言渡し、該判決は同月一八日確定するに至つた事情を認めることができる。かように控訴審が主たる控訴取下が効力を發生し最早審判すべからざるに至つたにかかわらず、その翌日有罪の判決を言渡したことは、明らかに違法である。論旨は、だから理由があり原判決は破棄さるべきである。 二 小年法第五一条にいわゆる「一〇年以上一五年以下において懲役又は禁錮を科する」とは、一〇年から一五年までの間の定期の懲役または禁錮を科するという趣旨である。 三 無期刑をもつて処断すべき少年に対し、少年法第五一条を適用しながら、その解釈をあやまり懲役一〇年以上一五年以下の不定期刑を科した判決は刑訴第四五八条第一号但書にいわゆる「被告人のため不利益」なものと断定することはできない。
一 控訴の申立が取下げられた事實を知らないでした判決の違法 二 小年法第五一条の法意。 三 小年法第五一条の解釈をあやまり不定期刑を科した判決と刑訴第四五八条第一号但書にいわゆる「被告人のため不利益」な判決。
舊刑訴法516条,舊刑訴法520条,小年法51条,刑訴法458条1号
判旨
適法な控訴取下げにより裁判所が審判権を失ったにもかかわらず、その事実を見過ごして言い渡された有罪判決は、審判すべきでない事項について判断したものとして法令違反となる。
問題の所在(論点)
被告人が控訴を取り下げたことにより裁判所の審判権が消滅した後に言い渡された判決の適法性、および控訴の取下げにより附帯控訴が失効するかどうかが問題となる(旧刑事訴訟法下)。
規範
被告人による適法な控訴の取下げがなされた場合、その時点で控訴審における審判の対象は消滅し、裁判所はもはや当該事件について実体判決を言い渡すことはできない。
重要事実
被告人が第一審の有罪判決に対し控訴を申し立て、検察官も附帯控訴を行った。その後、控訴審継続中に被告人が「訴訟取消書」と題する控訴申立の取下書を裁判所に提出し、これが裁判所に到達した。しかし、裁判所書記課が誤って当該書面を被告人に送還したため、裁判所は取下げの事実を認識しないまま、取下げの翌日に有罪判決を言い渡し、同判決が確定した。
あてはめ
被告人の提出した「訴訟取消書」は内容から控訴申立の取下書と認められ、裁判所に到達した時点で適法に効力を生じている。主たる控訴が取り下げられたことにより、裁判所は本件について審判することができなくなった。それにもかかわらず、取下げの事実を見落として翌日に有罪判決を言い渡したことは、審判すべきでない事項について審理し、判決を下したものであり、明らかに違法である。
結論
被告人による控訴の取下げにより審判権が消滅した後の判決は違法であり、非常上告に基づき原判決は破棄される。
実務上の射程
控訴の取下げという訴訟行為の効力発生時期と、それによる審判対象の消滅という効果を明確に示した。現行法においても、被告人が控訴を取り下げた場合に検察官の附帯控訴が失効すること(刑訴法360条の2)や、取下げによって審判権が失われる法理の基礎として引用し得る。
事件番号: 昭和26(さ)1 / 裁判年月日: 昭和27年11月19日 / 結論: 棄却
一 監獄にいる被告人が監獄の長に対し控訴取下申立書を差し出したときは、控訴裁判所がその申立のあつたことを知ると否とにかかわらず、ただちに控訴取下の効力を生じる。 二 控訴取下後の控訴審判決は当然無効であつてその内容に副う効力を生じない。 三 控訴取下後の控訴審判決に対する非常上告は許されない。
事件番号: 昭和27(す)110 / 裁判年月日: 昭和27年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所の判決または決定に対する異議申し立ては、刑事訴訟法上認められていない不適法なものである。 第1 事案の概要:申立人(詳細は判決文からは不明)が、最高裁判所の何らかの判断(前審の裁判等)に対し、異議申し立てを行った事案。本決定は、当該異議申し立ての適法性について判断を下したものである。 第…