一 監獄にいる被告人が監獄の長に対し控訴取下申立書を差し出したときは、控訴裁判所がその申立のあつたことを知ると否とにかかわらず、ただちに控訴取下の効力を生じる。 二 控訴取下後の控訴審判決は当然無効であつてその内容に副う効力を生じない。 三 控訴取下後の控訴審判決に対する非常上告は許されない。
一 在監者の控訴取下の効力発生時期 二 控訴取下後の控訴審判決の効力 三 控訴取下後の控訴審判決と非常上告
刑訴法367条,刑訴法366条1項,刑訴法454条,刑訴規則229条,刑訴規則227条,刑訴規則228条
判旨
控訴の取下げによって訴訟関係が既に消滅した後に言い渡された判決は、当然無効の判決であって「確定した判決」には当たらないため、これを対象とする非常上告は認められない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法454条にいう非常上告の対象となる「確定した判決」に、控訴取下げ後に言い渡された当然無効の判決が含まれるか。
規範
非常上告(刑事訴訟法454条)は、「判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したこと」を事由として認められる。したがって、適法かつ有効な確定判決が存在しない場合には、たとえ訴訟手続に法令違反があったとしても非常上告の対象とはならない。訴訟関係の消滅後に言い渡された判決は当然無効であり、非常上告の前提となる確定判決には該当しない。
重要事実
被告人は第一審の窃盗等被告事件で懲役1年の判決を受け、控訴を申し立てた。控訴審の審理が進む中、被告人は判決言渡し前の昭和25年10月27日、拘置支所長に対し控訴取下申立書を差し出した。しかし、名古屋高等裁判所は取下げの事実を知らず、同年10月30日に懲役1年(執行猶予5年)の判決を言い渡した。検事総長は、この判決には法令違反があるとして非常上告を申し立てた。
あてはめ
刑事訴訟法367条及び366条1項の規定によれば、拘置中の被告人による控訴取下げは、裁判所がその事実を知ると否とにかかわらず、書面を監獄の長等に差し出した時点で直ちに効力を生じる。本件では10月27日に取下げの効力が生じ、第一審判決の確定によって訴訟関係は終了している。したがって、その後の10月30日に言い渡された第二審判決は、裁判権の発動を欠く客観的に存在しない訴訟関係に対するものであり、当然無効といわざるを得ない。かかる無効な判決は、非常上告の対象たる「確定した判決」とは認められない。
結論
本件非常上告は、有効な確定判決を対象とするものではないため、不適法として棄却される。
実務上の射程
本判決は、非常上告の対象を「有効な確定判決」に限定し、外観上判決が存在しても当然無効な場合には同手続によれないことを示した。答案上は、訴訟条件の欠如や被告人死亡後の判決など、判決が当然無効とされる場面において、非常上告による救済の可否を論考する際の基礎となる。なお、反対意見が指摘するように、無効判決の執行を巡る混乱を避けるための政策的必要性との対比で理解しておくことが望ましい。
事件番号: 昭和25(さ)33 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
本件非常上告の理由とするところは、要するに昭和二四年一二月二八日名古屋簡易裁判所が言渡した判決において被告人は当時満一八才未満の少年であつたのに拘らず、満一八才以上の者と誤認したという事実認定非難を前提として手続違背を主張するものであつて、非常上告適法の理由とならないものである(昭和二五年(さ)第三九号同二六年一月二三…
事件番号: 昭和24(そ)1 / 裁判年月日: 昭和24年5月19日 / 結論: その他
一 第一審の有罪判決に對し被告人から適法な控訴の申立をなし、ついでこれに對し檢事から附帶控訴の申立がなされた控訴審に繋屬中被告人から昭和二三年一一月一〇日附を以て「訴訟取消書」と題する控訴申立の取下書と認むべきものを同裁判所に提出し、該書面は翌一一日同裁判所に到達した。從つて、本件控訴事件は、主たる控訴申立の取下によつ…
事件番号: 昭和25(さ)38 / 裁判年月日: 昭和26年7月6日 / 結論: 棄却
本件非常上告の理由とするところは、要するに昭和二四年五月二八日倉吉簡易裁判所の言渡した判決において被告人は当時満一八才未満の少年であつたのに拘らず満一八才以上の者と誤認したという事実認定非難を前提として手続違背を主張するものであつて、非常上告の理由とならないものである(昭和二五年(さ)第三九号同二六年一月二三日第三小法…
事件番号: 昭和28(さ)2 / 裁判年月日: 昭和28年4月28日 / 結論: 棄却
累犯加重の事由とされた前科に関し、確定判決に事実認定上の違法(審理不尽等)があることを主張し、かつこれを前提として同判決における累犯加重の違法を主張することは、非常上告の理由とならない。