原審の確定した事實によると被告人は長男Aと共謀の上昭和二二年一二月一四日午後一〇時頃から翌一五日午前零時頃までの間三回にわたつて栃木懸鹽谷郡a村大字b字c所在B農業會b(第d號)倉庫で同農業會倉庫係C保管の水粳玄米四斗入三俵づつ合計九俵を窃取したものであるというのであつて原審は右事實を併合罪として處斷しているのである。ところが右三回にわたる窃盜行爲は僅か二時間餘の短時間のうちに同一場所で爲されたもので同一機會を利用したものであることは舉示の證據からも窺はれるのであり、且ついずれも米俵の窃取という全く同種の動作であるから單一の犯意の發現たる一連の動作であると認めるのが、相當であつて、原判決舉示の證據によるもそれが別個獨立の犯意に出でたものであると認むべき別段の事由を發見することはできないのである。然らば右のような事實關係においてはこれを一罪と認定するのが相當であつて獨立した三個の犯罪と認定すべきではない。それ故原審が證據上別段の事由の認められないに拘わらず右三回の窃取行爲を獨立した三個の犯罪行爲と認定したことは實驗則に反して事實を認定した違法があると云わなければならない。
二時間餘の短時間内に同一場所で同一機會を利用して爲した窃盜に對し併合罪を問擬した判決の擬律錯誤の違法
刑法235條,刑法55條,刑法45條,舊刑訴法360條1項
判旨
短時間のうちに同一場所で、同一の機会を利用して行われた同種の窃盗行為は、単一の犯意に基づく一連の動作といえるため、包括して一罪と解するのが相当である。
問題の所在(論点)
数回にわたる同種の窃盗行為が、刑法上の包括一罪となるか、あるいは数罪(併合罪)となるか。特に犯意の単一性と実行行為の連続性の判断基準が問題となる。
規範
短時間のうちに同一場所で、同一の機会を利用して行われた同種の行為であれば、単一の犯意の発現たる一連の動作として、包括して一罪と解すべきである。別個独立の犯意に基づくものと認めるべき特段の事情がない限り、併合罪として処断することは許されない。
重要事実
被告人は、長男と共謀の上、ある日の午後10時頃から翌午前0時頃までの約2時間の間に、同一の農業会倉庫において、3回にわたり水粳玄米合計9俵を窃取した。原審はこれを3個の窃盗罪の併合罪として処断したが、各行為の間隔は極めて短く、窃取の対象や方法も共通していた。
あてはめ
本件における3回の窃盗行為は、僅か2時間余という短時間のうちに、同一の倉庫という同一場所でなされたものである。これは同一の機会を利用したものであり、いずれも米俵の窃取という全く同種の動作の繰り返しである。したがって、これらは単一の犯意の発現たる一連の動作と認められ、別個独立の犯意に出たものと認めるべき別段の事由も存在しない。よって、これらの行為は事実上および法律上、一個の犯罪として評価されるべきである。
結論
本件3回の窃盗行為は一罪(包括一罪)と認定するのが相当であり、独立した3個の犯罪(併合罪)とした原判決には実験則に反する事実認定の違法がある。
実務上の射程
同一機会に反復して行われる窃盗や傷害などの事案において、罪数決定の基準(包括一罪か併合罪か)を論じる際の基本判例となる。答案上は、時間的・場所的近接性、犯行態様の共通性、犯意の単一性の3点から一罪性を検討する枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和27(あ)2416 / 裁判年月日: 昭和27年9月12日 / 結論: 棄却
併合罪の関係にある一部の罪について確定裁判がなされても、その既判力は他の部分の罪には及ばないし、右両者の罪は同一の犯罪ではなく別個の犯罪であつて、後者の罪を審理裁判したことは確定判決に判示された前者の罪につき再び審理裁判をしたものということはできないから、憲法第三九条に違反しない。
事件番号: 昭和23(そ)2 / 裁判年月日: 昭和24年2月8日 / 結論: その他
右連続犯については、その一部について、さきに東京地裁において有罪の判決の言渡があり、その判決の確定したことは前述のとおりであるから、右確定判決の効力は、當然に、その連続犯の他の一部をなす本件犯罪にも及ぶものと云わなければならぬ。されば、本件公訴にかかる犯罪事實については、舊刑事訴訟法第三六三條第一號に從つて兔訴の言渡を…