併合罪の関係にある一部の罪について確定裁判がなされても、その既判力は他の部分の罪には及ばないし、右両者の罪は同一の犯罪ではなく別個の犯罪であつて、後者の罪を審理裁判したことは確定判決に判示された前者の罪につき再び審理裁判をしたものということはできないから、憲法第三九条に違反しない。
併合罪の関係にある確定判決を経ない他の罪を審理裁判することと憲法第三九条
刑法45条,刑法50条,刑訴法337条1号,憲法39条
判旨
連続犯規定の廃止後は、同一被害者に対する数日の間隔をおいた数個の窃盗行為は併合罪となる。併合罪の関係にある一部の罪について確定判決があっても、その既判力は他の余罪には及ばない。
問題の所在(論点)
旧刑法の連続犯規定が削除された後、同一被害者に対して繰り返された数個の窃盗行為が併合罪となるか。また、その一部についての確定判決の効力は他の行為に及ぶか(一事不再理の範囲)。
規範
旧刑法の連続犯規定(昭和22年法律第124号により削除)が適用されない場合、数日の期間を置いて行われた数個の窃盗行為は、たとえ被害者が同一であっても、刑法45条前段の併合罪として処断すべきである。この場合、個々の犯罪は別個独立のものであり、一部の罪について確定判決がなされても、その既判力(一事不再理の効力)は他の罪には及ばない。
重要事実
被告人は、昭和23年12月30日頃、B宅から衣類16点を窃取した(本件犯行)。一方で、被告人は別途、昭和23年12月1日、昭和24年1月7日、同年1月27日にいずれも同一のB宅において窃盗等の犯行に及び、これらについて名古屋地裁で併合罪として確定判決を受けていた。被告人側は、本件犯行と確定判決に係る犯行は同一の犯罪であるとして、確定判決の既判力が及ぶ結果、二重処罰の禁止(憲法39条)に抵触すると主張して上告した。
あてはめ
本件における第一の罪(昭和23年12月30日の窃盗)と、確定判決の対象となった各犯行(同年12月1日、翌1月7日、1月27日の各犯行)は、いずれも数日の期間を経て行われた別個の行為である。連続犯規定が廃止されている以上、これらは同一の犯罪ではなく併合罪の関係にある別個の犯罪である。したがって、確定判決の効力が本件犯行に及ぶことはなく、本件犯行を改めて審理裁判することは二重処罰には当たらない。
結論
本件犯行は確定判決の既判力により遮断されず、別罪として処断することは適法である。上告棄却。
実務上の射程
昭和22年の連続犯規定廃止後の判例として、実務上、反復して行われる窃盗が「包括一罪」ではなく「併合罪」として扱われる際の基礎的な規範を示す。答案上は、一事不再理の効力の範囲が「公訴事実の同一性(刑訴法337条1号)」に依拠することを前提に、各行為が別個の犯罪(併合罪)を構成する場合には既判力が及ばないことを説明する材料として用いる。
事件番号: 昭和26(あ)1143 / 裁判年月日: 昭和27年12月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数日間の間隔を置いて行われた複数の窃盗行為について、それらが一個の窃盗罪を構成するか、それとも併合罪(刑法45条)となるかが争われ、時間的接着性が認められない場合には包括一罪とはならず、数罪が成立すると判示された。 第1 事案の概要:被告人が複数の窃盗行為を行った事案において、それぞれの犯行は概ね…