刑法第五条但書に基く刑の執行の軽減又は免除は、裁判所が、刑の言渡と同時に判決主文においてなすべきものと解するのが相当である。
刑訴法第五条但書に基く刑の執行の軽減又は免除の手続
刑法5条,刑訴法458条1項
判旨
外国(占領軍軍事裁判所を含む)において確定判決を受けた犯罪事実と同一の事実につき、我が国の裁判所が重ねて刑を言い渡す場合、刑法5条ただし書に基づき、判決主文において刑の執行の減軽または免除を明示しなければならない。
問題の所在(論点)
外国(占領軍軍事裁判所)において既に刑の執行を受けた事実がある場合、我が国の裁判所が同一事実につき刑を言い渡すに際して、刑法5条ただし書に基づく減軽・免除を判決主文で明示する必要があるか。
規範
刑法5条ただし書は、外国で確定判決を受けた者が既にその刑の全部又は一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、又は免除するものと定めている。この規定は必要的であり、裁判所は刑の言い渡しと同時に、判決主文において具体的に刑の執行を減軽または免除する旨を宣示しなければならない。
重要事実
被告人は、米軍保管の軍用ズボンを窃取した事実につき、昭和25年に占領軍軍事裁判所にて重労働6年の刑に処せられ、約1年5ヶ月にわたりその刑の執行を受けた。その後、同一の犯罪事実について我が国の地方裁判所において窃盗罪で起訴され、懲役1年6月の判決を受けたが、当該判決では既往の受刑事実を参酌した刑の執行の減軽または免除の言渡しが主文になされなかった。この判決は控訴棄却を経て確定したため、検事総長が非常上告を申し立てた。
事件番号: 昭和23(そ)1 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 破棄自判
一 原判決の認めた前科は二年間その執行を猶豫せられたものであるのみならず昭和二〇年一〇月一七日勅令第五七九號大赦令によりその罪は赦免せられたものであること明白である。從つてその前科の刑の言渡は執行猶豫期間の終了を俟つまでもなく、即日將來に向つてその効力を失つたものといわねばならぬ。然るに原確定判決は、前述のごとくこの前…
あてはめ
本件被告人は、占領軍軍事裁判所において同一事実により受刑しており、その事実は第一審の審理中に明らかになっていた。それにもかかわらず、原判決が懲役1年6月を言い渡すに際し、刑法5条ただし書を適用して主文で執行の減軽または免除を行わなかったことは、法令に違反する。既に一部の執行を受けた事実がある以上、同条は必ず適用されるべきものであり、これを欠くことは被告人にとって不利益であるといえる。
結論
原判決は刑法5条ただし書に違反しており、被告人の不利益になるため破棄される。被告人を懲役1年6月に処した上で、同条に基づき刑の執行を1年3月に減軽する。
実務上の射程
二重処罰の禁止(憲法39条)と外国判決の効力に関する論点で活用できる。外国での執行済み刑期がある場合、刑法5条ただし書は「裁量的」ではなく「義務的」な減免を求めていると解釈し、判決主文にその旨を記載すべきことを示した実務上重要な射程を持つ。
事件番号: 昭和29(さ)3 / 裁判年月日: 昭和29年9月17日 / 結論: その他
刑法第二五条第二項によれば、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあつても、その執行を猶予された者が、一年以下の懲役又は禁錮の言渡を受け情状特に憫諒すべきものであるときは再び執行を猶予することができるのであるが、一年を超える懲役又は禁錮の言渡を受けたときは、その執行を猶予することはできないのである。しかるに原判決は前示の如…
事件番号: 昭和29(さ)4 / 裁判年月日: 昭和29年11月25日 / 結論: 破棄自判
昭和二九年法律五九号の附則二項は、同法施行前の犯罪については、同法施行後の犯罪と併合罪に当らない限り、右刑法二五条ノ二、一項前段の改正規定の適用がない旨を規定しているから、右法律五七号施行前のみの犯罪にかかる本件被告事件につき刑の執行猶予を言い渡す場合において、被告人を保護観察に対することを得ないものであることもまた明…
事件番号: 昭和28(さ)2 / 裁判年月日: 昭和28年3月20日 / 結論: 破棄自判
原判決において当時被告人の判示前科の刑が執行猶予中であることを認定しながら、刑法五六条、五七条を適用して累犯加重をした上被告人を懲役一年に処する旨の言渡をなしたことは、右各法条の適用を誤つた違法があり、本件非常上告は理由があるのみならず、原判決は被告人のため不利益であること明らかであるから、刑訴四五八条一号により原判決…