刑法二七条によつて、執行猶予を言い渡した確定裁判による刑の言渡がその効力を失つても、そのことは同法四五条後段の併合罪関係の成否とは相関しない。
刑法二七条による刑の言渡の失効と同法四五条後段の併合罪関係の成否
刑法27条,刑法45条
判旨
刑法45条後段の併合罪は、禁錮以上の刑に処する確定裁判が存在することを要件とし、その刑の言渡しの法的効果が存続していることは要件ではない。刑法27条による刑の言渡しの効力喪失は将来に向かって生じるものであり、同法45条後段の併合罪関係の成否には影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
刑法27条により執行猶予の言渡しが効力を失った場合、その確定裁判より前に犯された罪との間で、刑法45条後段の併合罪(事後的分離裁判)が成立するか。刑法27条の「効力を失う」の意味と45条後段の要件の関係が問題となる。
規範
刑法45条後段は、ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったという「事実」を要件とするものであり、刑の言渡しに基づく法的効果の存続を要件とするものではない。また、刑法27条の「刑の言渡しは効力を失う」とは、将来に向かってその法的効果が消滅することを意味し、過去に確定裁判が存在したという客観的事実までを否定するものではない。
重要事実
被告人が、ある罪について執行猶予付の禁錮以上の刑に処せられ、その裁判が確定した。その後、当該執行猶予期間が満了し、刑法27条により刑の言渡しが効力を失った。本件では、この確定裁判前に犯した別の罪が、刑法45条後段の併合罪として処理されるべきか、それとも同条の適用がない通常の罪として扱われるべきかが争われた。
あてはめ
刑法45条後段の適用にあたっては、裁判確定の事実が認められれば足りる。本件において、被告人に対し禁錮以上の刑に処する確定裁判が存在したことは歴史的事実として動かない。刑法27条による効力喪失は、あくまで将来に向かって法的効果を消滅させるものにすぎず、確定裁判が存在したという事実自体を遡及的に消滅させるものではない。したがって、執行猶予期間が満了して刑の言渡しが効力を失った後であっても、45条後段の併合罪関係は相関せず、依然として認められると解される。
結論
執行猶予の言渡しが効力を失っても、刑法45条後段の併合罪関係の成否には影響しないため、同条後段の併合罪として処断すべきである。
実務上の射程
執行猶予期間満了後に過去の余罪が発覚した場合の罪数処理に直接適用される。実務上、併合罪(刑法45条後段)となることで、刑法48条2項により併科されるか、あるいは既に確定した刑との調整が行われることになり、被告人にとっての不利益を調整する機能を有する。
事件番号: 昭和25(あ)1596 / 裁判年月日: 昭和28年6月10日 / 結論: 棄却
併合罪の関係に立つ数罪が前後して起訴され、後に犯した罪につき刑の執行猶予が言い渡されていた場合に、前に犯した罪が同時に審判されていたならば一括して執行猶予が言い渡されたであろうときは、前に犯した罪につきさらに執行猶予を言い渡すことができる。