併合罪の関係に立つ数罪が前後して起訴され、後に犯した罪につき刑の執行猶予が言い渡されていた場合に、前に犯した罪が同時に審判されていたならば一括して執行猶予が言い渡されたであろうときは、前に犯した罪につきさらに執行猶予を言い渡すことができる。
執行猶予を言い渡された犯罪のいわゆる余罪についてさらに執行猶予を言い渡すことができるか
刑法25条1号,刑法26条1項2号,刑法45条
判旨
刑法25条1項1号の「刑ニ処セラレタル」とは、併合罪の関係にある数罪が別々に裁判される際、前の判決で執行猶予が付された場合に限り、不合理な結果を避けるため「実刑を言渡された場合」を指すと解すべきである。
問題の所在(論点)
刑法45条後段の併合罪の関係にある罪について、一方が先に確定し執行猶予が付されている場合、後に審判される他方の罪について刑法25条1項1号の規定にかかわらず重ねて執行猶予を付すことができるか。「刑ニ処セラレタル」の意義が問題となる。
規範
刑法25条1項1号にいう「刑ニ処セラレタル」とは、原則として禁錮以上の刑の宣告を受けたことを指すが、併合罪(同法45条後段)の関係にある数罪が前後して裁判される場合であって、前の判決で執行猶予が言渡されているときは、執行猶予制度の本旨および審判時期による著しい不均衡を回避するため、例外的に「実刑を言渡された場合」を指すものと解する。また、この場合、刑法26条2号の「刑ニ処セラレタル」も同様に解し、後の裁判で執行猶予を付しても前の執行猶予は取り消されない。
重要事実
被告人は、昭和24年5月に前科(賍物故買罪)につき懲役10月・執行猶予3年の判決を受け確定した。本件(別の賍物故買罪)は、当該前科の確定判決より前の昭和23年11月頃に犯されたものであり、前科と本件は刑法45条後段の併合罪の関係にあった。原審は、本件の判決時において被告人が前科の執行猶予期間中であることを理由に、更なる執行猶予を付す法定の要件を欠くと判断した。
事件番号: 昭和44(あ)1853 / 裁判年月日: 昭和45年9月29日 / 結論: 棄却
刑法二七条によつて、執行猶予を言い渡した確定裁判による刑の言渡がその効力を失つても、そのことは同法四五条後段の併合罪関係の成否とは相関しない。
あてはめ
本件被告人が犯した二罪は併合罪の関係にあり、もし同時に審判されていたならば一括して執行猶予が言渡された可能性が高い。それにもかかわらず、起訴の前後という偶然の事情によって、後の裁判で法律上絶対に執行猶予を付せないと解することは、執行猶予制度の本旨に反し著しく均衡を失する。したがって、本件における前科の執行猶予判決は、同条項号にいう「刑ニ処セラレタル」には該当しないと解するのが相当である。原審が法定の要件を欠くと判断した点は、法令の解釈を誤ったものといえる。
結論
併合罪の関係にある前科に執行猶予が付されている場合、後の裁判においても情状により刑の執行を猶予することができる。本件原判決には解釈の誤りがあるが、量刑自体は不当といえず、破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
併合罪の分離裁判における執行猶予の可否に関する重要判例。答案では、被告人に前科(執行猶予中)がある場合、その前科と今回の罪が併合罪(45条後段)の関係にあるかを確認し、制度的公平性の観点から25条1項1号の欠格事由に当たらないとする論証に用いる。
事件番号: 昭和28(あ)2715 / 裁判年月日: 昭和29年11月5日 / 結論: 破棄差戻
一 原判決がその後になされた最高裁判所の判決と相反する判断をしていても、刑訴第四〇五条第二号にいわゆる最高裁判所の判例と相反する判断をしたことにはならない。 二 併合罪の関係に立つ数罪が前後して起訴され、後に犯した罪につき刑の執行猶予が言渡されていた場合に、前に犯した罪が同時に審判されていたならば一括して執行猶予が言渡…