所論のように數個の一犯罪を併合罪として刑を加重し處斷刑を定める場合において裁判所が各犯罪の犯情に輕重がないと認めるときは、いずれの犯罪の犯情が重いかを特に判決に明示するを要しないものと解すべきである。なぜならば、かく解することは何等の實害を伴うものでなく、却つて實際上迅速處理の便益を與えるものだからである。
數個の同一犯罪を併合罪として處斷刑を定める場合に各犯罪の犯情に輕重がないときその輕重を判決に明示する要否
刑法45條,刑法47條,刑法10條,舊刑訴法360條1項
判旨
数個の同一犯罪を併合罪として処断する場合、裁判所が各犯罪の犯情に軽重がないと認めるときは、刑法10条に基づきいずれが重いかを判決に明示する必要はない。
問題の所在(論点)
数個の同種犯罪を併合罪(刑法45条前段)として処断する場合、刑法10条の規定に照らし、判決書において「最も重い罪」を具体的に特定し明示する必要があるか。
規範
刑法10条の規定により数個の同一犯罪を併合罪として刑を加重し処断刑を定める場合、裁判所が各犯罪の犯情に軽重がないと認めるのであれば、いずれの犯罪が最も重いかを判決において特に明示することを要しない。これは、かかる処理が実害を伴わず、迅速な裁判処理の便益に資するためである。
重要事実
被告人は8個の贓物故買罪を犯したとして起訴され、原判決はこれらを併合罪として認定し、懲役1年及び罰金1000円の実刑を言い渡した。これに対し弁護人は、併合加重をするにあたっては最も重い罪を1個定めた上で加重すべきであるのに、原判決がそれを明示していないことは刑法10条の解釈及び適用を誤るものであると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原判決は8個の贓物故買罪という同種の犯罪を併合罪として処断している。裁判所がこれらの犯罪間に犯情の軽重の差がないと判断した場合には、あえてそのうちの1つを特定して「最も重い」と宣言しなくても、適法な処断刑の範囲内で刑を科すことができる。したがって、特定がなされていないことをもって直ちに法令違反があるとはいえない。
結論
各犯罪の犯情に軽重がないと認めるときは、いずれの罪が重いかを判決に明示する必要はなく、原判決の処断に誤りはない。
実務上の射程
併合罪の処断刑形成のプロセスに関する手続的要件を緩和する射程を有する。特に同種罪名が並ぶ事案において、形式的な特定よりも実質的な量刑の妥当性と迅速性を重視する実務上の運用を肯定する根拠となる。
事件番号: 昭和24(れ)211 / 裁判年月日: 昭和24年8月18日 / 結論: 棄却
刑法第四七條の併合罪における最も重き罪につき定めた刑を決定するには、法定刑中二個以上の有期の懲役又は禁錮刑、すなわち各本條に二個以上の刑名あるときは、まず適用すべき有期の懲役刑又は禁錮刑を選擇した上、これに再犯加重、法律上の減輕を行つた處斷刑のみを標準として、同法第一〇條に從い決すべきもので、各本條に併科的又は選擇的に…