判旨
刑法25条1項2号が、前に禁錮以上の刑に処せられたことを執行猶予の欠格事由としている点は、二重処罰を禁じる憲法39条後段に違反しない。当該規定は執行猶予の要件を定めたものに過ぎず、過去の犯罪について重ねて責任を問い、処罰する趣旨ではないからである。
問題の所在(論点)
刑法25条1項2号が、過去に禁錮以上の刑に処せられたことを執行猶予の要件(欠格事由)としていることは、憲法39条後段が禁じる二重処罰にあたるか。
規範
憲法39条後段が禁じる「二重処罰」とは、ある犯罪について既に確定した刑事責任を重ねて問うことを指す。これに対し、刑の執行猶予の要件を定める規定は、被告人の情状や再犯の可能性を考慮して刑の執行の要否を判断するための基準を設けるものであり、過去の犯罪そのものを再度処罰するものではない。
重要事実
被告人は、過去に禁錮以上の刑に処せられた前科があった。裁判所が刑法25条1項2号に基づき、前科があることを理由に執行猶予を付さなかったところ、弁護人は、前科を理由に不利に扱うことは同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものであり、憲法39条後段に違反すると主張して上告した。
あてはめ
刑法25条1項2号は、刑の執行猶予を認めるか否かの客観的・政策的な判断基準を示した規定である。これは、過去の犯罪事実を量刑上の情状や執行猶予の適否を判断するための資料として考慮しているに過ぎない。したがって、前に禁錮以上の刑に処せられた事実を執行猶予の欠格事由とすることは、その過去の犯罪について再度被告人の責任を問い、重ねて処罰することを意味するものではないと評価される。
結論
刑法25条1項2号は憲法39条後段に違反しない。したがって、同条を適用して執行猶予を付さなかった原判決は正当である。
実務上の射程
本判決は、執行猶予の要件や累犯加重規定が二重処罰にあたらないとする確立した判例法理の一翼を担う。答案作成上は、憲法39条の「二重処罰の禁止」の意義を論じる際、過去の犯罪事実を量刑の資料(情状)として考慮することが二重処罰に該当しないことを示す根拠として活用できる。特に前科による不利益な取扱い(累犯加重、執行猶予欠格、仮釈放の制限等)の合憲性を論述する際の必須の法理である。
事件番号: 昭和27(あ)2947 / 裁判年月日: 昭和28年9月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法56条及び57条の再犯加重規定は、前犯に対する確定判決を変更し、あるいは前犯に対して重ねて刑罰を科す趣旨ではない。したがって、再犯であることを事由に新罪の法定刑を加重することは、憲法39条が禁じる二重処罰の禁止に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、刑法56条所定の再犯(累犯)に該当する者…