刑法四五条後段の確定裁判のあつたことを認定する証拠書類は、刑訴第三〇五条による取調をすることを要する。
刑法第四五条後段の確定裁判のあつたことを認定する証拠書類と刑訴第三〇五条による取調の要否。
刑法45条,刑訴法305条,刑訴法317条
判旨
判決で認定した罪の中間に確定判決がある事実は、併合罪(刑法45条後段)の適否を左右し量刑上の不利益をもたらし得るため、証拠調べを経る必要がある。もっとも、証拠調べを欠く違法があっても、宣告刑が第一審より重くないなど正義に反すると認められない場合には、原判決は破棄されない。
問題の所在(論点)
併合罪(刑法45条後段)の成否を遮断する「確定裁判」の事実を認定するにあたり、証拠調べ(刑事訴訟法305条)を経る必要があるか。また、証拠調べを欠くまま認定した違法がある場合、直ちに判決を破棄すべきか。
規範
判決で認定した甲罪と乙罪との中間に確定判決(丙罪)が存在するという事実は、量刑の法律上の範囲(刑法45条後段の併合罪適用の有無)を左右するものである。したがって、当該事実を認定の資料とするには、当該前科調書が口頭弁論に顕出され、刑事訴訟法305条による証拠調べを経ていることを要する。
重要事実
被告人Aは、一連の賍物故買罪(一)および(二)を犯した。原審は、公判前に取り寄せた被告人の酒税法違反による確定判決の前科調書に基づき、(一)と(二)の間に確定判決があったと認定した。その結果、原審は(一)と(二)を併合罪とせず、各別の主文で刑を言い渡した。しかし、当該前科調書は原審の公判において証拠調べが行われていなかった。
あてはめ
原審が証拠調べを経ていない前科調書により確定判決の事実を認定した点は、口頭弁論主義および証拠法の原則に照らし違法である。もっとも、第一審が(一)(二)の全部を併合罪として宣告した刑に比べ、原審の二つの宣告刑の合計は重いとはいえない。したがって、本件の違法は、刑事訴訟法411条を適用して原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
結論
前科調書の証拠調べを欠いた認定は違法であるが、宣告刑の合計が重くなっていない本件の事情下では、判決を破棄するには至らない。上告棄却。
実務上の射程
併合罪の分離(刑法45条後段)を導く中間判決の事実は、被告人に不利益な影響を及ぼし得るため厳格な証明(証拠調べ)を要するという基準を示した。答案上は、量刑の基礎となる事実の認定手続に関する論点として活用できるが、411条(判決に影響を及ぼすべき法令違反)との関係で、結論が妥当であれば破棄されないという限界も併せて押さえるべきである。
事件番号: 昭和26(あ)3474 / 裁判年月日: 昭和28年2月12日 / 結論: 棄却
当該事案における量刑理由を判示しただけで他の事案に適用すべき法律的見解を含んでいない判決は、刑訴第四〇五条にいわゆる判例といえない。