判旨
酒税法違反の事案において、酒精分1度の焼酎原料醪を製造した事実に鑑み、その製造に使用された蒸留機を酒税法(当時)60条4項に基づき没収することは適法である。
問題の所在(論点)
酒税法違反(密造)の事案において、焼酎原料の醪を製造した段階で、その工程に使用された「蒸留機」を同法60条4項に基づき没収することができるか。
規範
酒税法(昭和30年当時)60条4項に基づき、酒類の密造等の犯罪組成物件である蒸留機等の機械器具を没収するためには、現に酒類の原料となるべき醪(もろみ)の製造等が行われている事態が認められ、その機械が当該違反行為に供されたものであることを要する。
重要事実
被告人は、酒精分1度の焼酎原料醪を製造したとして酒税法違反の罪に問われた。第一審判決は、この製造行為に使用された蒸留機について、当時の酒税法60条4項の規定を適用し、これを没収する旨を言い渡した。被告人側は、原審で主張していなかった点を含め、当該蒸留機が没収対象に当たらない旨などを主張して上告した。
あてはめ
本件において第一審が認定した事実は、被告人が「酒精分1度の焼酎原料醪」を製造したというものである。このように、既に酒類の原料となる具体的な対象が製造されている以上、その製造過程で使用された蒸留機は、酒税法違反の犯罪に関連する物件として同法60条4項の没収規定に合致するものと解される。また、判示中の「等」の表示は、没収物件が複数であることを示す趣旨であり、特定された物件以外の没収を意味するものではないため、手続上の違法も認められない。
結論
酒精分1度の焼酎原料醪を製造した以上、その製造に使用された蒸留機を没収することは適法である。
実務上の射程
行政刑罰における没収規定の適用範囲に関する判断である。特に酒税法のような専門的・技術的な取締法規において、どの段階の物件までが犯罪組成物件として没収可能かを判断する際、原料(醪)の完成度合いを基準に機械器具の没収の可否を肯定した点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和26(あ)4197 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
酒税法第六〇条第四項の規定は、密造された酒類、副産物等はもちろんそれに使用しまたは使用せんとして準備した一切の原料、機械、器具又は容器を沒収する趣旨である。