判旨
清酒等の密造事件において、酒税法に基づき没収の対象となる物件は、現に製造の用に供されたもののみならず、その製造の用に供しようとした物件も含まれる。また、被告人以外の所有に属することが明らかな物件でない限り、適法に没収することができる。
問題の所在(論点)
酒税法違反の事件において、密造の「用に供せんとした」物件が没収の対象となるか。また、第三者の所有権が不明確な物件を被告人から没収することの適法性が問題となる。
規範
酒税法における没収の規定(旧法60条3項)は、当該犯罪行為に現に供された物件だけでなく、その用に供しようとした物件をも対象とする。また、刑法19条等の一般原則に照らし、被告人及び共犯者以外の所有であることが明らかな物件でない限り、没収の言渡しは妨げられない。
重要事実
被告人は酒類の無免許製造(密造)を行ったとして、酒税法違反で起訴された。第一審判決は、本件清酒や醪の製造に関し、その用に供した、あるいは供しようとした各物件について、酒税法60条3項を適用して没収を言い渡した。これに対し弁護人は、没収物件の認定が不当であることや、第三者の所有物である可能性を理由に上告した。
あてはめ
第一審および原審の認定によれば、本件各物件は少なくとも清酒等の製造に際して「その用に供せんとした物件」であると認められる。証拠によれば、これらの物件は本件清酒密造の「用に供したもの」と解するのが相当である。また、本件物件が被告人及び共犯者以外の所有であることが明らかであるとは認められないため、刑法19条や旧刑事訴訟法の規定に抵触する不当な没収には当たらない。
結論
没収物件を密造の用に供したものと認定して没収を言い渡した第一審および原審の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
特別法(酒税法)における没収の範囲が、予備的な段階(用に供しようとしたもの)まで及ぶことを示唆する。答案上は、没収の対象物件の特定や、第三者没収が問題とならない場合の適法性の根拠として利用できる。
事件番号: 昭和28(あ)5104 / 裁判年月日: 昭和30年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】酒税法違反の事案において、酒精分1度の焼酎原料醪を製造した事実に鑑み、その製造に使用された蒸留機を酒税法(当時)60条4項に基づき没収することは適法である。 第1 事案の概要:被告人は、酒精分1度の焼酎原料醪を製造したとして酒税法違反の罪に問われた。第一審判決は、この製造行為に使用された蒸留機につ…