判旨
酒税法60条4項(現行54条2項等参照)にいう「犯罪ニ係ル」物とは、密造に使用された器具・容器のみならず、製造された酒類や、将来の貯蔵のために準備された容器も含まれる。
問題の所在(論点)
酒税法60条4項(当時)に規定される没収の対象である「犯罪ニ係ル」物の範囲に、製造行為に使用された道具だけでなく、製造された酒類自体や、その後の貯蔵を目的として準備された容器が含まれるか。
規範
酒税法上の没収規定における「犯罪ニ係ル」物とは、当該禁止行為に直接供された物件のみならず、犯罪行為の結果として生じた物、及び当該犯罪の目的を達するために密接に関連して準備された物件をも包含する。
重要事実
被告人が、酒類製造免許を受けずに醪(もろみ)を製造した事案において、原審は以下の物件を没収した。(イ)本件醪製造に使用された器具および容器、(ロ)製造された醪(濁酒)、(ハ)当該醪から作る予定であった焼酎を入れるために準備されていた容器。弁護人は、これらが没収の対象となる「犯罪ニ係ル」物にあたらないとして、憲法31条違反および酒税法違反を主張して上告した。
あてはめ
(イ)の製造用器具・容器は、密造という禁止行為を遂行するために直接用いられた物であり、当然に「犯罪ニ係ル」といえる。次に、(ロ)の製造された醪は、無免許製造という犯罪行為によって生み出された客体そのものであり、犯罪との密接な関連性が認められる。さらに、(ハ)の焼酎用容器は、製造された酒類を収容・保管するために準備されたものであり、一連の犯行計画の一部として不可欠な関連性を有している。したがって、これらはいずれも「犯罪ニ係ル」物としての要件を満たすと解される。
結論
本件各物件はいずれも「犯罪ニ係ル」物にあたり、原判決の没収に違法はない。
実務上の射程
酒税法や関税法等の行政刑罰における没収規定の解釈において、没収対象を単なる実行行為の手段に限定せず、犯行の結果物や密接に関連する準備物まで広く認める際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1261 / 裁判年月日: 昭和28年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】清酒等の密造事件において、酒税法に基づき没収の対象となる物件は、現に製造の用に供されたもののみならず、その製造の用に供しようとした物件も含まれる。また、被告人以外の所有に属することが明らかな物件でない限り、適法に没収することができる。 第1 事案の概要:被告人は酒類の無免許製造(密造)を行ったとし…