判旨
没収は、その理由を証拠に基づいて説示することを要しない。また、犯罪行為の原料として使用しようとした物件は、当該犯行に関連のあるものとして没収することができる。
問題の所在(論点)
没収の言渡しに際し、その理由を証拠に基づいて説示する必要があるか。また、犯罪の原料として使用しようとした物件を「犯行に関連のあるもの」として没収することができるか。
規範
没収の裁判において、その理由を証拠に基づいて具体的に説示することは不要である。また、刑法19条1項各号(本件当時は旧法)に該当する物件、特に犯罪行為の原料として供しようとした物件は、犯行との関連性が認められる限り、没収の対象となる。
重要事実
被告人が犯した犯罪行為(具体的な罪名は判決文からは不明)において、押収された米麹一斗が、その犯罪の原料として使用しようと準備されていたものであった。第一審判決はこの米麹を没収したが、弁護人は、没収の理由が証拠に基づいて説示されていないことや、物件が犯行に関係のないものであること等を理由に、訴訟手続の違背および憲法違反を主張して上告した。
あてはめ
本件で押収された米麹一斗は、第一審が認定した事実および挙示された諸証拠に照らせば、本件犯罪行為の原料として使用しようとしたものであることが明らかである。このように、犯罪の実行に供しようとした物件は、当該犯行と密接な関連性を有しているといえる。また、没収の理由説示については、裁判所が没収の対象となるべき事由を認定していれば足り、特段の証拠による裏付けを判決書に説示する義務まではないと解される。
結論
本件米麹は犯行に関連する物件として没収し得る。また、没収の理由を証拠に基づき説示しなかった第一審判決に訴訟手続の違背はなく、憲法違反も認められない。
実務上の射程
判決書における理由記載の程度(刑訴法335条1項)に関する判例である。没収が主刑に付加される従刑的性質を有しつつも、手続的には簡略な説示で足りることを示している。答案上は、没収の要件(犯行との関連性)が充足されている場合に、理由不備の違法を否定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)5977 / 裁判年月日: 昭和29年3月23日 / 結論: 棄却
没収を言い渡すためには、その物件が裁判所により押収されている物であることを要しない。