没収を言い渡すためには、その物件が裁判所により押収されている物であることを要しない。
没収と裁判所による押収の要否
酒税法62条2項,刑訴法99条,刑訴法101条
判旨
没収を言い渡すためには物件が裁判所により押収されていることを要しない。また、酒税法に基づく没収規定は刑法の特別規定であり、犯行に使用された物件であれば適法に没収できる。
問題の所在(論点)
1. 没収の刑を言い渡すために、対象物件が裁判所により押収されている必要があるか。2. 酒税法62条2項に基づく没収の範囲と刑法19条の関係をいかに解すべきか。
規範
1. 没収の裁判をするにあたり、対象となる物件が事前に裁判所によって押収されていることは、没収を言い渡すための法律上の要件ではない。2. 特定の取締法規(酒税法等)に定められた没収規定は、刑法19条の特別規定として機能し、その没収の範囲は同条と同一ではない。
重要事実
被告人両名が酒税法違反(醪の所持)に問われた事件において、第一審裁判所は、本件の醪所持に関して使用された物件の没収を言い渡した。これに対し弁護人は、物件が押収されていないことや、没収の範囲が不当であることなどを理由に、没収の違法を主張して上告した。
あてはめ
1. 没収は刑罰の一種であり、その執行の前提として押収が必要とされることはあっても、宣告自体の要件として押収を求める規定はない。したがって、未押収の物件であっても没収を言い渡すことは可能である。2. 酒税法62条2項は刑法19条に対する特別規定である。本件で没収された物件は、証拠に照らして本件醪(もろみ)の所持に関して現に使用されたものであると認められる。特別規定の趣旨に鑑みれば、このような物件を没収することは法的に正当化される。
結論
物件が押収されていなくても没収の言渡しは可能であり、酒税法違反の犯行に使用された物件を没収した第一審の判断に違法はない。
実務上の射程
刑事実務において、任意提出された物件や未だ発見されていない物件についても、犯行供用物等としての要件を満たせば没収の言渡しが可能であることを示す。答案上は、没収の要件を論じる際に「押収の有無は宣告の有効性に影響しない」旨の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1823 / 裁判年月日: 昭和27年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】没収は、その理由を証拠に基づいて説示することを要しない。また、犯罪行為の原料として使用しようとした物件は、当該犯行に関連のあるものとして没収することができる。 第1 事案の概要:被告人が犯した犯罪行為(具体的な罪名は判決文からは不明)において、押収された米麹一斗が、その犯罪の原料として使用しようと…