本件の沒収は酒税法六〇条四項によるもので同条項は刑法一九条の特別規定であり(昭和二五年(れ)三〇〇号同二五年六月六日第三小法廷判決)、しかも前記酒税法の規定によれば同法に違反して製造した酒類やその機械、器具及び容器はそれが何人の所有に属するかを問わず沒収すべきものであるから沒収物件の所有権が何人に属するかを判示する必要はないものというべきである。
酒税法違反につき沒収物件の所有権の帰属を判示する要否
刑法19条,酒税法(昭和24年法律43号により改正後のもの)60条4項
判旨
酒税法に違反して製造された酒類等の没収において、同法60条4項(当時)は刑法19条の特別規定であり、所有者が誰であるかを問わず没収することができるため、判決で所有者の帰属を判示する必要はない。
問題の所在(論点)
酒税法違反事件において、酒税法の規定(特別法)に基づき没収を行う際、対象物件が犯人以外の所有に属するか否かを確定し、判決で判示する必要があるか。また、それが刑法19条2項(所有者制限)の適用範囲に含まれるか。
規範
酒税法違反に伴う物件の没収に関する規定(旧酒税法60条4項)は、刑法19条の特別規定である。同規定に基づく没収は、当該物件の所有権がいかなる者に属するかを問わず強制的に執行される性質を有するため、没収の対象となる物件が犯人以外の者の所有に属するか否かを確定し、判示する必要はない。
重要事実
被告人は酒税法違反の罪に問われ、原審において密造された酒類、機械、器具および容器の没収を言い渡された。これに対し被告人側は、押収物件が犯人以外の者の所有に属するか否かを確定せずに没収を言い渡したことは、刑法19条2項の適用を誤り、ひいては憲法29条(財産権の保障)に違反するものであると主張して上告した。
あてはめ
本件における没収は、一般法である刑法19条ではなく、特別規定である酒税法60条4項(当時)に基づいて行われている。同条項の文言上、違反行為に係る酒類や器具等は、何人の所有に属するかを問わず没収すべきものとされている。したがって、没収に際して所有権の帰属を特定する実益はなく、所有関係の認定を欠いたとしても、刑法19条2項違反や憲法違反の問題は生じないといえる。
結論
酒税法違反による没収においては、物件の所有者の如何を問わないため、その帰属について判示する必要はない。原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事法における特別法による必要的な没収(絶対的没収)の効力を示した。刑法19条2項の「犯人以外の者に属しないもの」という制限が、特別法の明文規定によって排除されることを確認した事例であり、酒税法等の行政刑罰における没収手続の簡略化を肯定する射程を持つ。ただし、第三者の権利保護(憲法31条、29条)の観点からは、後の「第三者所有物没収事件」最高裁判決(昭和37年11月28日)等の文脈で慎重に検討されるべき論点である。
事件番号: 昭和26(あ)4197 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
酒税法第六〇条第四項の規定は、密造された酒類、副産物等はもちろんそれに使用しまたは使用せんとして準備した一切の原料、機械、器具又は容器を沒収する趣旨である。