判旨
検察官が起訴した範囲を超えて裁判所が判断することはできず、密造酒の製造と所持の関係が問題であっても、起訴が所持のみに止まる場合は所持罪として処罰されるべきである。
問題の所在(論点)
検察官が密造酒の所持のみを起訴した場合に、裁判所は製造の事実にまで踏み込んで罪数関係を判断したり、製造の事実を認定したりする必要があるか。審判対象の範囲が問題となる。
規範
裁判所の審判対象は、検察官の起訴状に記載された公訴事実によって画定される(不告不理の原則)。本来、一罪あるいは数罪の関係に立つべき一連の行為であっても、検察官がその一部のみを起訴した場合には、裁判所は起訴された範囲に限定して有罪・無罪の判断を下すべきであり、起訴されていない事実を犯罪事実として認定することは許されない。
重要事実
被告人が免許を受けずに酒類を製造し、かつその酒類を所持していた事案において、検察官は「密造酒類の所持」という事実のみを起訴した。第一審および原審(二審)は、この起訴内容に基づき、密造酒所持の事実のみを犯罪事実として認定し、被告人を処罰した。これに対し、被告人側は、製造と所持の罪数関係等に触れないまま所持罪のみで処罰するのは不当である旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において、検察官の起訴は「密造酒類の所持罪」としての処罰を求める範囲に止まっていた。裁判所は、起訴状に記載されていない「無免許製造」の事実を犯罪事実として認定しておらず、また、製造と所持が一罪か数罪かという罪数論についても判断を示していない。これは、裁判所の審判が検察官の起訴範囲に拘束されるという刑事訴訟法の基本原則に則った適法な対応である。起訴の範囲をどのように設定するかは専ら検察官の起訴の当否に関する問題であり、裁判所が起訴されていない事実に踏み込まなかったことに違憲・違法はない。
結論
本件を密造酒類の所持罪として処罰したのは検察官の起訴がその範囲に止まっていたためであり、適法である。上告棄却。
実務上の射程
刑事訴訟法における審判対象の画定(不告不理)に関する極めて簡潔な先例である。答案上は、一罪の一部起訴がなされた場合に裁判所が起訴された事実のみを裁くことの正当性を基礎づける際に活用できる。ただし、本判決は罪数論の判断を回避しているため、実質的一罪の一部起訴における残部への既判力の及ぶ範囲などの議論とは別途整理が必要である。
事件番号: 昭和26(あ)1261 / 裁判年月日: 昭和28年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】清酒等の密造事件において、酒税法に基づき没収の対象となる物件は、現に製造の用に供されたもののみならず、その製造の用に供しようとした物件も含まれる。また、被告人以外の所有に属することが明らかな物件でない限り、適法に没収することができる。 第1 事案の概要:被告人は酒類の無免許製造(密造)を行ったとし…