判旨
没収の対象となる物件が被告人自身の所有物である場合には、被告人以外の者の所有に属することを前提とする違憲の主張は理由がない。
問題の所在(論点)
没収の対象物件が被告人以外の者の所有に属することを前提として、没収規定の違憲性を主張し得るか。また、本件物件の所有権は誰に帰属するか。
規範
没収の対象となる物件が被告人以外の第三者の所有に属する場合の適正手続(憲法31条、29条)が問題となるが、当該物件が被告人自身の所有に属することが記録上明らかな場合には、第三者の権利侵害を前提とする憲法判断を行う必要はない。
重要事実
被告人が酒税法違反に問われた事案において、第一審判決によりビール瓶4本、二斗甕2個および換価金が没収(または追徴)の対象とされた。弁護人は、酒税法60条4項(没収規定)が憲法に違反する旨を主張し、当該物件が被告人以外の者の所有に属することを前提とした上告趣意を申し立てた。
あてはめ
記録(22丁)を精査すると、没収の対象とされたビール瓶4本、二斗甕2個および換価金は、いずれも被告人Aの所有物であることが認められる。したがって、これらの物件が「被告人以外の者の所有に属すること」を前提とした弁護人の論旨は、事実の前提を欠いている。また、被告人以外の者の所有物である場合の違憲を主張する論旨も、本件の事実関係においては無関係な論議であるといえる。
結論
本件物件は被告人の所有物であるため、第三者の所有権侵害を理由とする違憲の主張は理由がなく、上告を棄却する。
実務上の射程
第三者の所有物没収に関する適正手続(いわゆる第三者没収事件・最大判昭37.11.28の前段階の判断)を示す。被告人の所有物である限り、第三者の権利を援用しての違憲主張は排斥されるという、主張の前提条件を確認する際に活用される。
事件番号: 昭和25(あ)1597 / 裁判年月日: 昭和27年3月4日 / 結論: 棄却
本件の沒収は酒税法六〇条四項によるもので同条項は刑法一九条の特別規定であり(昭和二五年(れ)三〇〇号同二五年六月六日第三小法廷判決)、しかも前記酒税法の規定によれば同法に違反して製造した酒類やその機械、器具及び容器はそれが何人の所有に属するかを問わず沒収すべきものであるから沒収物件の所有権が何人に属するかを判示する必要…