判旨
控訴審が第一審判決を破棄して自判する際、殺意を否定して傷害致死罪を適用しながら「第一審判決の認めている罪となるべき事実に法律を適用する」と判示した場合でも、文脈上、事実を修正して適用した趣旨と解される限り、直ちに違法とはならない。
問題の所在(論点)
控訴審が第一審判決を破棄自判する際に、第一審の認定事実を引用しつつ異なる罪名を適用する判示方法が、訴訟法上の違法(理由齟齬や不備)にあたらないか。
規範
控訴審が自判を行う際、判決文の一部に不備や矛盾があるように見える表現が含まれていても、判決理由の全体を総合的に解釈し、第一審判決の認定事実を適切に修正した上で法条を適用した趣旨であることが明確であれば、その判示方法は有効である。
重要事実
第一審は被告人に殺意を認め殺人罪で有罪とした。控訴審は、被告人に殺意はなく傷害致死と認定するのが相当であるとして第一審判決を破棄した。しかし、自判において法律を適用する際、「第一審判決の認めている本件罪となるべき事実に法律を適用すると、被告人の判示所為は刑法205条1項(傷害致死罪)に該当する」と記述した。これに対し、殺人の事実を前提に傷害致死罪を適用した矛盾があるとして上告された。
あてはめ
原判決は、一方で弁護人の主張を容れて「殺人ではなく傷害致死と認定するを相当とする」と明示している。この判示と併せれば、法律適用部分における「第一審判決の認めている事実」とは、第一審の認定事実のうち殺意の部分を傷害致死へと修正した事実を指していると解するのが合理的である。したがって、判示方法に不備はあるものの、実質的な事実認定と法律適用の間に矛盾はなく、違法とまではいえない。
結論
原判決の判示方法に不備はあるものの、第一審の認定事実を修正した上で傷害致死罪を適用した趣旨と認められるため、上告は棄却される。
実務上の射程
判決文の文理のみに固執せず、理由全体の論理構成から合理的に解釈することで、一見矛盾する判示の有効性を認める「判決の合理的な解釈」の好例である。答案上は、判決の理由齟齬が疑われる場面で、前後の文脈から実質的な認定内容を特定する際の論理として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)4813 / 裁判年月日: 昭和28年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定の誤りや量刑不当を憲法違反として主張しても、刑訴法405条の上告理由には当たらない。また、事案の記録に照らして職権破棄事由(同法411条)も認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人側は、原判決(二審判決)に対して憲法違反を主張して上告した。しかし、その主張の…