判旨
裁判官による証人尋問(刑訴法227条)において、被告人側の立ち会いがないまま作成された証人尋問調書の証拠能力を認めることは、憲法37条2項に反しない。伝聞例外の要件を規定する刑訴法321条1項1号等の規定は、憲法の保障する反対尋問権を不当に侵害するものではない。
問題の所在(論点)
刑訴法227条・228条に基づき、被告人・弁護人の立ち会いなしに作成された裁判官の証人尋問調書の証拠能力を認める刑訴法321条1項1号が、憲法37条2項の保障する証人審問権に違反するか。
規範
憲法37条2項が保障する証人審問権(反対尋問権)は絶対無制限ではなく、適正な刑事裁判を実現するために設けられた刑事訴訟法上の合理的制限に服する。裁判官の前で供述録取がなされた書面について、一定の要件(証人の死亡、国外居住、供述不能等)を前提に証拠能力を認める規定は、証拠の真実性と必要性を考慮した合理的な例外として合憲である。
重要事実
被告人が関与した刑事事件において、検察官は刑訴法227条に基づき裁判官に証人Aの尋問を請求した。当該尋問には検察官のみが立ち会い、被告人や弁護人の立ち会い・反対尋問の機会がないまま証人尋問調書が作成された。第一審判決はこの調書を有罪認定の証拠として採用したが、被告人側はこれが憲法37条2項に違反し、証拠能力がないと主張して上告した。
あてはめ
憲法37条2項は、被告人に対してすべての証人に審問する機会を保障している。しかし、刑訴法227条に基づく尋問は、公判準備段階での証拠保全等として裁判官が行うものであり、その調書の証拠能力については同法321条1項1号において厳格な要件(供述者の公判期日への不出頭等)が課されている。本件調書はこれらの法定手続を遵守して作成されたものであり、適正手続による証拠収集の必要性と証拠の高度な信用性に裏打ちされているため、反対尋問の機会がなかったとしても憲法違反の事由とはならない。過去の大法廷判例(昭和24年、25年)の趣旨に照らしても、この解釈は確立されている。
結論
本件証人尋問調書の証拠能力を肯定した原判決に憲法違反の違法はなく、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
裁判官による証人尋問調書(321条1項1号)の合憲性を肯定する基礎判例。答案上は、伝聞例外規定の合憲性を論じる際の理論的根拠(絶対無制限の権利ではなく、真実発見のための合理的制限が可能である点)として活用できる。ただし、現代の運用では被告人等の立ち会いの機会を確保する努力が求められる点に留意が必要である。
事件番号: 昭和27(あ)3165 / 裁判年月日: 昭和27年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項は、被告人が請求する証人を必ず尋問することを要求しているものではなく、裁判所が証拠調べの必要性を判断し、請求を却下することは同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、被告人が請求した証人についての尋問が行われなかったことに対し、憲法37条2項が保障する「証人を求める権利…