判旨
刑事訴訟法321条1項2号但書にいう「供述を信用すべき特別の情況」の存否の判断は、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられている。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法321条1項2号但書にいう「公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況(特信情況)」の有無の判断は、いかなる基準で行われるべきか。また、その判断権限は裁判所にどのように認められるか。
規範
刑事訴訟法321条1項2号但書に規定される「公判期日における供述よりも前の供述を信用すべき特別の情況(特信情況)」の有無の判断については、一義的な基準を設けるのではなく、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねるべきである。
重要事実
被告人の刑事事件において、証人Aが検察官事務取扱検察事務官に対して行った供述を録取した供述調書謄本の証拠能力が争点となった。第1審および原審(控訴審)は、当該調書について、刑訴法321条1項2号但書の要件を満たすものとして証拠能力を認めた。これに対し、弁護人が判例違反を理由に上告した事案である。
あてはめ
最高裁判所は、過去の判例(昭和29年7月20日判決等)を引用した上で、特信情況の存否の判断は「事実審裁判所の合理的な裁量」に任せられていると解示した。本件においても、原審がAの供述調書謄本の証拠能力を認めたことは、この裁量の範囲内で行われたものであり、従来の最高裁判例や高等裁判所の判例に反するものではないと評価される。
結論
特信情況の有無は事実審裁判所の合理的な裁量により判断される。本件において供述調書の証拠能力を認めた原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、特信情況の判断が裁判所の広い裁量に属することを確認している。答案上は、外部的事況だけでなく供述内容自体からも判断できるとする「相対的特信状態」の議論と併せて、事実審の判断を尊重する根拠として用いることができるが、現代の学説・実務ではより客観的な外部的事情を重視する傾向にある点に留意が必要である。
事件番号: 昭和28(あ)4607 / 裁判年月日: 昭和30年8月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法321条1項各号に規定される「供述よりも信用すべき特別の情況(特信情況)」の存否の判断は、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられる。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件について起訴された事案において、第一審判決が証拠能力を認めた供述証拠に対し、弁護人が公判期日における供述よりも信用すべき特…