判旨
刑事訴訟法321条1項2号但書に規定される「特信情況」の有無は、原審裁判所の合理的な裁量に委ねられる。検察官面前調書等の証拠能力は、外部的状況を総合考慮した裁判所の裁量的判断により決定されるべきである。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法321条1項2号但書における「信用すべき特別の情況」の存否について、裁判所にどのような判断権限が認められるか。また、同条項の適用が憲法31条の適正手続きに反しないかが問題となる。
規範
刑事訴訟法321条1項2号但書にいう「供述の内容となった事実を記載した書面」につき、証拠能力を認めるための要件である「信用すべき特別の情況(特信情況)」の有無は、原審裁判所の裁量に委ねられている。これは、外部的状況から供述の信頼性が担保されているか否かを、事実審が証拠に基づいて判断すべき性質のものだからである。
重要事実
被告人が起訴された事件において、証人Aが副検事の面前で供述した内容を録取した調書(検察官面前調書)につき、検察官が証拠請求を行った。原審(控訴審)は、同条2号但書の規定に基づき、当該調書には特信情況が認められるとして証拠能力を肯定し、これを有罪判決の証拠とした。これに対し弁護人は、当該調書を証拠としたことは憲法31条(適正手続き)違反であり、また刑訴法の解釈を誤っているとして上告した。
あてはめ
最高裁は、特信情況の存否の判断について、原審裁判所の裁量に任されているものと解するのが相当であると判示し、原審の判断に合理性を認めた。弁護人が主張する憲法31条違反の訴えについても、その実質は単なる刑訴法321条1項2号の解釈争いに帰するものであり、適法な上告理由に当たらないと退けた。具体的事実関係については判決文からは不明であるが、法理として裁判所の広範な評価権限を認めたものである。
結論
検察官面前調書の特信情況の有無は、事実審裁判所の裁量に属する事項である。したがって、原審が特信情況を認めて証拠採用した判断に裁量権の逸脱がない限り、適法である。
実務上の射程
伝聞例外(刑訴法321条1項2号但書)の成立要件における「特信情況」の判断枠組みを示す重要判例である。答案上は、特信情況を「供述時の外部的状況から判断する」とする際の、裁判所の事実認定の権限を基礎づける根拠として活用できる。ただし、現代の運用では裁量という言葉だけで片付けるのではなく、供述の自由性や録音録画の有無等の具体的要素から厳格に判断される傾向にある点に留意が必要である。
事件番号: 昭和28(あ)4607 / 裁判年月日: 昭和30年8月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法321条1項各号に規定される「供述よりも信用すべき特別の情況(特信情況)」の存否の判断は、事実審裁判所の合理的な裁量に委ねられる。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件について起訴された事案において、第一審判決が証拠能力を認めた供述証拠に対し、弁護人が公判期日における供述よりも信用すべき特…