判旨
不法占拠者を立ち退かせる目的であっても、住居侵入等の実力行使は、諸般の事情を考慮して違法性を欠くと認められない限り、自救行為として正当化されない。
問題の所在(論点)
不法占拠者を立ち退かせるという目的で行われた住居侵入行為(刑法130条前段)について、自救行為として違法性が阻却されるか。
規範
私人力による権利の実現(自救行為)が違法性を阻却するためには、法的正当な手続による権利の回復を待っていては、権利の実現が不可能、または著しく困難になるなどの緊急の必要性が認められ、かつ、その手段・方法が社会通念上相当な範囲に留まっていることが必要である。
重要事実
被告人は、自分の子の所有地上にある建物に、正当な権原なく居住(不法占拠)しているAを立ち退かせるため、当該建物に侵入した。被告人は、この住居侵入行為が自救行為に当たり違法性が阻却されると主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人は子の土地を不当に占有するAを排除しようとしたものであるが、裁判所は、諸般の事情を考慮しても被告人の行為が違法でないとはいえないと判断した。これは、司法手続による救済を待てないほどの緊急性が認められないか、あるいは住居侵入という手段が相当性を欠くことを示唆しており、法秩序が許容する自救行為の限界を超えたものと評価される。
結論
本件住居侵入の所為は自救行為には当たらず、違法性は阻却されない。
実務上の射程
自救行為の成否が問題となる事案(不動産侵奪や窃盗罪における奪還など)において、司法手続の優先原則を強調する判例として活用できる。答案上は、緊急性と相当性の要件を立てた上で、本判決を引用しつつ、実力行使の違法性を肯定する方向で論述する際の根拠となる。
事件番号: 昭和28(あ)1290 / 裁判年月日: 昭和30年4月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働争議に伴う立入りであっても、解雇の有効性にかかわらず、侵入行為自体の態様が平穏を害するものであれば刑法130条前段の住居侵入罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人4名は、労働組合の活動の一環として特定の建物に立ち入った。被告人らは解雇の不当性を主張し、当該立入りが正当な業務行為等に該当すると…