結論に影響のない事項に対する論難として不適法とされた事例
憲法9条
判旨
住居侵入罪(刑法130条前段)の保護法益は、住居等の事実上の平穏である。したがって、居住者等が法律上正当な権限を有するか否かは犯罪の成立を左右しない。
問題の所在(論点)
住居侵入罪(刑法130条前段)における保護法益は何か。また、居住者や看守者が法律上の正当な権限を有していない場合でも、同罪は成立するか。
規範
刑法130条前段の住居侵入罪の保護法益は、住居等の事実上の平穏である。よって、現に居住者又は看守者がその場所を事実上支配・管理している以上、当該居住者等に法律上の正当な権限(所有権や占有権等)が備わっているか否かは、本罪の成否に影響を及ぼさない。
重要事実
被告人が住居侵入罪に問われた事案において、被告人側は、対象となった住居の居住者又は看守者が法律上正当な権限を有していないこと等を理由に、憲法9条違反等を含む上告趣意を申し立てた。
あてはめ
本件において、被告人は居住者等の権限の有無を争うが、住居侵入罪が守ろうとするのは「事実上の平穏」そのものである。居住者がその場所に現に居住し、あるいは看守者が管理しているという事実状態が存在する限り、その権限の存否という法律的評価は、当該場所の平穏を害する侵入行為の違法性を否定する理由にはならない。したがって、居住者等の権限に関する主張は、判決の結論に影響を及ぼすものではない。
結論
住居侵入罪は成立する。居住者等の法律上の権限の有無は、犯罪の成立を左右しない。
実務上の射程
住居侵入罪の保護法益が「事実上の平穏」であることを端的に示した判例である。答案上は、不法占拠者や借地契約が終了した後の居住者の住居への侵入についても本罪が成立することを論証する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)4954 / 裁判年月日: 昭和30年7月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法占拠者を立ち退かせる目的であっても、住居侵入等の実力行使は、諸般の事情を考慮して違法性を欠くと認められない限り、自救行為として正当化されない。 第1 事案の概要:被告人は、自分の子の所有地上にある建物に、正当な権原なく居住(不法占拠)しているAを立ち退かせるため、当該建物に侵入した。被告人は、…