刑事訴訟において事實の認定が證據によらなければならないことは、法律の規定するところであるが(舊刑訴法三三六條、新刑訴法第三一七條)、右にいう證據は直接證據のみを指すのではなく、間接證據(情況證據)をも含む趣旨であることも亦いうまでもないところである。されば、被告人が犯罪事實の一部を否認しているような場合には時に直接證據を欠いていても間接證據によつて犯罪事實の存在が推斷される限り證據による證明があるのであるから、これを目して證據によらない事實の認定であると斷定することはできない。
刑訴法第三一七條(舊刑訴法三三六條)にいはゆる證據に間接證據が含まれるか
舊刑訴法360條1項,舊刑訴法336條
判旨
住居侵入罪の成否について、相続人等の権利者であっても、現に居住する者の意思に反して立ち入ることは、特段の事情がない限り「故なく」侵入したものとして違法である。また、その主観的態様については、直接証拠がなくても間接証拠(情況証拠)から推断することが可能である。
問題の所在(論点)
住居の相続人やその代理人が、現に居住している者の意思に反して立ち入る行為が、住居侵入罪における「故なく」侵入したといえるか。また、直接証拠がない場合に間接証拠のみで主観的事実を認定できるか。
規範
住居侵入罪(刑法130条前段)の「故なく」とは、正当な理由がないことを意味する。住居の管理権や所有権の相続等の権利を有する場合であっても、現にその住居を占有・居住している者の意思に反して立ち入ることは、法的に許容される特段の事情がない限り、正当な理由を欠き不法な侵入となる。また、故意や共謀の認定は、直接証拠を欠く場合であっても、諸般の情況から推断できる限り証拠裁判主義に反しない。
重要事実
被告人A及びEは、亡Cの相続人Dの代理人等として、Cの借家に同居していたBの不在中、Bが遺産搬出のための立入りを拒絶していることを知りながら、Bの居室である二階の間に立ち入った。弁護人は、Dが相続人として家屋の「主先的使用権」を有し、Bの権利は「従後的使用権」に過ぎないため、相続人側の立入りは適法であると主張して上告した。
あてはめ
本件では、Bが当該家屋に現に居住しており、被告人らはBが不在であり、かつ立入りがBの意思に反することを十分承知していた。相続人側の主張する「主先的使用権」なるものは原審で認められておらず、Bの意思を排斥してまで立入りを適法とするような事情は認められない。したがって、Bの意思に反する立入りは正当な理由を欠く。また、犯意の認定についても、原審が挙げた間接証拠を総合すれば、被告人らの共謀や認識を推断することは十分に可能であり、経験則上不合理な点は認められない。
結論
被告人らの行為は、居住者Bの意思に反する不法な立入りとして住居侵入罪を構成する。原判決に証拠によらない事実認定の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
権利者による自力救済的な立入りを制限する判例として重要である。実務上は、たとえ所有権者であっても、居住者の平穏を害する形での立入りは原則として「故なく」に該当すると構成すべきである。また、主観的要素(意思に反することの予見等)については、当時の対立関係や事前のやり取り等の間接事実を積み重ねて立証する際の指針となる。
事件番号: 昭和24(れ)2128 / 裁判年月日: 昭和24年12月13日 / 結論: 棄却
辯護人は、論旨において被害者A方は氷屋であつて被告人はふだん氣易く同人方に出入し、同家奥の間は氷水を飲むときにも便所へ行くときにも通つたりしていたので、被告人が奥の間に這入るについては右Aの承諾を豫想していたのであると主張する。しかし右のような事柄について承諾が豫想されるからといつて、直ちに強姦の目的で侵入することの承…