公判調書に、弁護人が公判期日に公判廷に出張し、被告人のため弁論した旨記載されているときは、これに反する主張をすることを許さない。
公判廷に弁護人が出頭し弁論をしたかどうかの手続と公判調書の記載
旧刑訴法64条
判旨
住居侵入罪における「正当な理由」の有無は、邸宅および付近の状況、犯行時刻等の客観的事実を総合して判断されるべきであり、自己の疾病による休憩という主観的弁解のみでは正当化されない。また、公判調書に弁護人が出頭・弁論した旨の記載がある以上、旧刑事訴訟法下においては同調書のみが証明力を有する。
問題の所在(論点)
1. 被告人が主張する「疾病による休憩」という目的が、住居侵入罪における侵入の「正当な理由」にあたるか。2. 公判調書に弁護人の出廷および弁論の記載がある場合、その手続の適法性を争うことができるか。
規範
住居侵入罪における侵入の「正当な理由」の有無は、単に被告人の主観的な目的のみによるのではなく、当該邸宅および付近の状況、犯行の時刻といった客観的な諸事情を総合して判断される。また、訴訟手続の適法性は公判調書の記載に基づき絶対的な証明力を有する(旧刑事訴訟法64条参照)。
重要事実
被告人は、他人の邸宅に侵入したとして住居侵入罪で起訴された。被告人は、侵入の理由について「痔疾により休憩するためであった」と主張し、正当な理由があるとして無罪を争った。第一審および控訴審は、現場付近の状況や犯行時刻などの証拠に基づき、被告人の主張を採用せず、有罪判決を下した。これに対し、被告人および弁護人は、事実誤認や弁護権の不当な制限(公判期日の手続違背)を理由に上告した。
あてはめ
1. 原審が認定した邸宅および付近の状況、並びに犯行時刻等に照らせば、被告人が主張する「痔疾での休憩」という理由は、他人の邸宅に侵入することを正当化する事情とは認められない。客観的状況から見て「故なく(正当な理由なく)」侵入したと認定することは適当である。2. 記録上の公判調書によれば、弁護人は公判期日に出頭し、証人尋問や被告人のための有利な弁論を行っている。旧刑事訴訟法64条の規定に基づき、調書の記載は絶対的な証明力を有するため、これと異なる事実を前提とした弁護権制限の主張は採用できない。
結論
被告人の侵入には正当な理由が認められず、住居侵入罪が成立する。また、公判手続に違法はなく、上告棄却。
実務上の射程
住居侵入罪の「正当な理由」の判断において、被告人の主観的な弁解が客観的な状況(時間・場所)と矛盾・乖離する場合には、これを排斥できることを示す。実務上は、違法性阻却事由としての「正当な理由」を否定する際の考慮要素を提示する資料となる。
事件番号: 昭和26(あ)4958 / 裁判年月日: 昭和27年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】住居等の管理権者による立入りの承諾があったとしても、それが前後の事情に照らして真意に基づくものでない場合には、住居侵入罪の成立を妨げる正当な承諾とは認められない。 第1 事案の概要:被告人は、A寺の境内に立ち入った。被告人は、同寺の副住職Bから「(寺の内部を)探してみよ」との言葉を得ており、これが…