判旨
詐欺罪において、公訴事実と判決で認定された事実との同一性は、欺罔の態様や被害金額等の個別的な要素の差異にかかわらず、社会的事実としての一回性を有する限り肯定される。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法312条1項にいう「公訴事実の同一性」の有無。特に、詐欺罪において起訴状に記載された具体的態様と認定事実が異なる場合に、訴因変更の手続を経ることなく、あるいは別個の事実として扱うことなく判決を導くことが許されるか。
規範
公訴事実の同一性(刑事訴訟法312条1項)の判断にあたっては、基本的事実関係が同一であるか、または非両立の関係にあるかによって決すべきである。詐欺罪においては、欺罔の対象、日時、場所、手段、被害額等の各要素を総合的に比較し、社会的見地からみて同一の犯罪事実と評価し得る場合には、公訴事実の同一性が認められる。
重要事実
本件において、上告人は詐欺罪に問われていたが、起訴状に記載された事実と裁判所が認定した事実に一定の相違があった。弁護人は、詐欺罪における起訴事実と判決事実の同一性の判定標準について、先行する判例を引用し、原判決がそれらに違反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁判所は、弁護人が引用した判例は詐欺罪の事実同一性判定に関する個別的な事例判断であり、本件には適切でないと指摘した。その上で、記録を精査しても、原判決が認定した事実は起訴された事実との間に同一性が認められる範囲内のものであり、職権で破棄すべき重大な法令違反(刑訴法411条)も認められないと判断した。
結論
本件上告は棄却される。原判決が認定した事実は、公訴事実の同一性の範囲内にあるものとして適法である。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(あ)6438 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯の成否について、事実誤認の主張は刑訴法405条の上告理由に当たらないと判示し、原判決の判断を維持した。 第1 事案の概要:被告人がAらと共謀した事実、およびAに作成権限がない文書を作成した事実について、第一審および控訴審で認定された。弁護人は、Aには作成権限があったこと、および共謀の事…
詐欺罪における訴因変更の要否や公訴事実の同一性の判断において、事実の細部に相違があっても、犯行の基本的一体性が保たれている限り、同一性を肯定する実務上の運用を支持するものである。ただし、本決定自体は極めて簡潔なため、具体的な判断基準については他のリーディングケースを参照する必要がある。
事件番号: 昭和29(れ)3 / 裁判年月日: 昭和29年8月24日 / 結論: 破棄自判
所論の本件公訴事実と原審認定事実とは基本的事実関係としては、いずれも同一物件について車票の差換による不法領得という同一行為に関するものであつて、一は所論の日時場所における貨車の転送をもつて窃盗既遂として起訴し他の転送先の駅又は倉庫で管理者より騙取し又は騙取しようとしたと認定したのは単に占有関係の法的価値評価を異にした結…
事件番号: 昭和23(れ)1534 / 裁判年月日: 昭和24年3月22日 / 結論: 棄却
被告人は昭和二二年一一月十五日食糧管理法被疑事件について勾留せられ其の勾留期間中同月二七日本件詐欺罪について檢察事務官の取調を受けその際録取された聽取書中の供述記載が原判決の證據として採用されていること所論の通りであるがさればとて右の聽取書を無効とする理由はなく、これを證據として採用したことが違法であるとも言い難い。